提督 ss クビ。 中学生提督日記

【加賀・艦これSS】提督「好嫌度CL?」

提督 ss クビ

———- 上司「何度言えばわかるんだ!!!」バンッ ??「す、すみません…。 」 上司「もういい。 君は明日から来なくていいから。 」 ??「えっ…。 」 上司「来なくていいといってる!!クビだ!!!」 ??「…はい…失礼します…。 」 ———— ??「あーあ…バカだ…俺は。 」 ??「何やってもダメだ…。 仕事もクビか…」 ———— ??「ただいま…」バタン ??「…誰もいない…よね。 …悲しいなぁ。 これからどうしよ…。 」 「司令官!!」 ??「……え?」 「司令官っ!!こっちです!!!」 ??「き、きみは…!!」 「司令官をお迎えに来ました、特型駆逐艦の一番艦、吹雪です!」 ??「……え、え…。 」ガクッ 吹雪「し、司令官?!どうしたんですか?!」 ??「き、きみは本当に…吹雪…ちゃんなのかい…?」 吹雪「は、はいっ!」 ??「う、うっ…」グスッ 吹雪「どうしたんですか?司令官…」 ??「…ご、ごめんね。 大丈夫だよ。 」 吹雪「そうですか…?」 ——————— ?? 以下提督 「えぇっ?!俺が提督に?!」 吹雪「はい!司令官には直接鎮守府に来て指揮を執るように、と命令が来ましたのでこうしてお迎えに来たんです!」 提督「…ちょ、ちょっと話が…要するに、俺は君たちの本当の提督として活動するってこと?」 吹雪「?…司令官はもう司令官ですよ?」 提督「あ、ああ。 そうだね。 …俺が鎮守府に、君たちの鎮守府に行くってことになるのかな?」 吹雪「はい!他の皆も司令官を楽しみにしているんですよっ!」 提督「へ、へぇ…」 『クビだ!!!』 提督「…!!………な、なあ、吹雪ちゃん」 吹雪「はいっ!司令官!」ビシッ 提督「……お、俺は鎮守府に行くことはできない」 吹雪「…………え?」 提督「俺、ダメダメなんだ…。 仕事もちゃんとできない落ちこぼれ。 …ミスばっかり。 …そんな奴がみんなを指揮して…なんて。 」 吹雪「司令官…」 提督「ごめんね、吹雪ちゃん。 だから俺は 「大丈夫ですっ!!!」 提督「えっ…?」 吹雪「…平気ですよ…そんなの…!」 提督「へ、平気って、何を 「司令官は!!」 吹雪「司令官は私たちの司令官なんです!!」 提督「っ!!」 吹雪「これまで司令官は…私たちを勝利に導いて来たじゃないですか…!……たとえ司令官が上手くできなかったとしても…私たちがいるじゃないですか…!」ニコっ 提督「………」 —————それから10分————— 提督「なぜだ…。 艦これが起動できない…。 」 吹雪「司令官、どうしたんですか?」 提督「あ、いや、なんでもないよ。 …吹雪ちゃん、鎮守府には誰がいるの?」 吹雪「え?…私と…駆逐艦の子たちが…」 提督「…え?戦艦…とかは…?」 吹雪「いませんよ?」 提督「え…。 」 なぜだ…、戦艦や軽巡洋艦だとか…いたはずだ!例えば……あれ?なぜだ?…思い出せない…! 吹雪「…?」 —————————- 提督「……じゃあ、吹雪ちゃん。 ……行こうか」 吹雪「…はい!」 提督 なぜか吹雪ちゃん以外の艦娘の名前を思い出せない…。 …クビにされたショックで忘れてしまったのかな…。 吹雪「では、司令官!行きましょう!」 ブワァァァン… 提督「なんだ?!光がっ!!」 ——舞鶴鎮守府—— 提督「っ!!」 吹雪「ようこそ!司令官!」 提督「うぉぉ……本当だ……鎮守府…!!」 吹雪「まずは執務室に案内します!」ウキウキ 提督「あ、ありがとう。 」 すごい楽しそうだ…。 ——————- 提督 …全く艦娘たちを見ない…。 ここで話しかけるのは… 吹雪「司令官と直接お話しするのが夢だったんです!今更ですけど、これからよろしくお願いしますねっ!司令官っ!」 提督「あ、ああ!うん!」 提督 野暮なことを考えるのはやめておこう…。 きっと部屋で休んでて、俺が来てるのは知らされてないんだろう ———- ガチャ… 吹雪「此処が執務室ですっ!」 提督「あ、ありがとう。 」 吹雪「えっ!?…あ、あ!え、えっと、司令官をお迎えするために吹雪、頑張っちゃいました!」ニコッ 提督「へぇ…!…大変だったでしょ?お疲れ様、ありがとうね。 」 吹雪「ありがとうございます!」 ——————— 吹雪「…では、吹雪は一度席を外しますね!」 提督「え、あ、うん。 」 吹雪「失礼しますっ!」びしっ ガチャ… 提督「…すごい綺麗にされている…ベッドもフカフカだ。 …」 提督「気になるのはあれだ。 …ほかの艦娘たちがどこにいるか…。 …もしかして…」 提督「…吹雪ちゃんしか艦娘が…いない?」 提督「いやぁ、そんなわk 「司令官っ!!!」 提督「なぁぁぁぁい!?!?……ど、どうしたの!?吹雪ちゃん!」 吹雪「た、大変ですっ…す、すぐ船渠に!!」 提督「あ、うん!!すぐにいく!!!」 —船渠 ドック — 「こんな姿じゃ一人前のレディーになれないわ…」 「流石にこれは…」 「なによもうっ…!」 「痛いのです…」 提督「……み、みんなボロボロだ…!…し、しかも…あの子たちは…。 」 提督「第六駆逐隊…。 」 吹雪「…鎮守府海域にて攻撃を受けたらしいです…」 提督「…優秀なあの駆逐艦の子たちが鎮守府海域の敵に…?」 提督「やっぱりゲーム 艦これ とは違うことが起きてもおかしくないか…」 提督 …だけど俺、此処にいていいんだろうか… 『邪魔だ!どいてくれ!!』 提督 仕事でも役に立とうと思っても邪魔ばっかり……お、俺って此処にいてもいいのか? 提督 執務室に帰って仕事しておいた方が…だけど…あの子たちも心配… 『邪魔だ!!!』 提督「ぁ……」 提督「…… 執務室に行こう… 」 ————————— 吹雪「あ、あれ?…司令官…?」 ————————— 提督「………」 提督「………」 『あいつまじで邪魔!…ふざけてんのかよ…』 『クビだ!!』 提督「メンタル弱過ぎだな…」 提督「本当に此処にいていいのか…俺…」 コンコン 「司令官、吹雪です。 入ってもいいですか?」 提督「あ、ああ、うん。 」 吹雪「失礼します。 …」 提督「さっきは勝手に帰っちゃってごめんね…」 吹雪「大丈夫です。 司令官!言い方悪いですけどあの子たちは司令官に気付いてなかったですし!」 提督「……あとでちゃんと艦娘たちに挨拶をするよ」 吹雪「そうですね!少しすれば修理 治療 が終わると思います!」 提督「わかった、ありがとう」 ——第一集会室—— 提督「ここは…」 吹雪「第一集会室です。 基本、艦隊の個別指揮の伝達や会議に使われます。 」 提督「へぇ…。 色々あるんだね…」 吹雪「講堂があるんですが、そこは少し広すぎるので…。 …ここだったら司令官の声も通りやすいかなと!」 提督「あぁ、そうだね。 ありがとう」 吹雪「じゃあみんなをここに呼んできますね!…あ、そうだ、司令官はあそこの小部屋に入っていてください!」 提督「え?…う、うん…だ、大丈夫?俺もみんなを呼びに…」 吹雪「放送で伝えるので平気です!さぁ!司令官はここにっ!」 提督「そ、そんな押さなくても!」 バタンっ… ———————— ガヤガヤガヤガヤ… 提督「吹雪ちゃんからの放送から2分くらいでガヤガヤし始めた…」 提督「多くもなく少なくもない場所から出るガヤ音だ…」 … 提督「あ、あれ?静かになったな。 」 『ここに集まってもらったのはみんなに報告があるから!』 提督「……」 ガチャっ 吹雪「司令官っ!来て下さい!」 提督「え、…あ、うん…」 「えぇっ!?」 「司令官!?」 「司令官さん!?」 提督「……」 吹雪「司令官!挨拶をお願いしますっ!」 提督 な、なんだ…!?キラキラした視線しか感じない…! 提督「あ、あー…えっと…」 艦娘たち「…」キラキラ 提督「…スゥー…………舞鶴鎮守府にて提督をすることになりました…!よろしくお願いします!」 …シーン…… 提督 しまった…?!面白いことを言えばよかった…!? パチパチパチパチパチパチっ! 「よろしくなのです!」 「司令官のためにもっともっと働いちゃうわよ!」 提督「あ、ああ…!」 提督 あの子たちは…あの修理に来た子たち…よかった、大事に至らなかったんだな。 —執務室— 提督「……で、1つ気になることがある。 」 提督「吹雪ちゃん」 吹雪「はいっ!どうしました?司令官!」 提督「…あそこにいた子たちが全員?」 吹雪「はい!みんな来てました!」 提督「……へ、へぇ…」 提督「駆逐艦だけかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」 ———————- それからしばらく 執務室 提督「……そんな真実を知ってしまったが…しばらく経って駆逐艦の子たちとも仲良くなれた。 …」 提督「…だけど、何故だ…。 …建造もできなければ開発もできない…。 駆逐艦の子たちとずっとやっていくことになるのか…?」 提督「……えぇ…。 …嫌じゃないけど……周りからロリコンとか言われそうっ!」 「入るぞーっ!司令官!」 提督「え?…あ、ああ。 いいよ」 深雪「おはよー司令官!」 提督「お、おはよう。 …どうしたんだい?」 深雪「司令官は、好きな人とかいるのかー?」 提督「…はい?」 深雪「え?」 提督「す、好きな人って…。 うーん…俺はみんな好きだけどなぁ…」 深雪「!?…あ、ありがとよっ、司令官…。 」 提督「え、なに、え、え。 」 バタんっ… 提督「えぇ…」 提督「…みんな良くしてくれてるし好きなんだけどなぁ…。 こういう時は…」 - 提督『深雪のことが好きに決まってるじゃないか…』どんっ 深雪『えっ…し、司令官…やめてくれよ…』 提督『今夜は…寝かさないぜ…』キリッ - 提督「いや、違う。 相手は女の子。 脳内でもそんなことやっちゃだめ。 」 提督「ってか朝なのに今夜ってなんなんだよ」 時計『午前11時やで』 - こんこん 「司令官、失礼するよ」 提督「二人目の来客…はい、どうぞ。 」 響「やあ。 」 提督「響ちゃんじゃないか。 どうしたの?」 響「いや、司令官に質問があってね。 」 提督「みんな好きだよ?」 響「え?」 提督「え?」 響「え?」 提督「……質問はなに?」 響「司令官はこの『提督』という立場に立つ前には何をやっていたんだい?」 提督「…?」 響「駆逐艦の吹雪ちゃんから聞いたんだよ。 『司令官は素晴らしい』ってね。 」 提督「えぇ…なにそれ…。 俺は全然素晴らしくなかったよ。 」 響「…それは自分からみた姿じゃないか。 優しい人は自分のことを優しいとは言わない。 これと同じことだよ。 」 提督「…あ、ああ…」 響「単なる質問だけど、別に答えたくないなら答えなくても構わないよ。 だけど司令官のことをもっと知りたいんだ。 」 提督「……じゃあ話すよ。 まあ、俺も響ちゃんとは話せてなかったからねぇ…こう話せていいと思うよ」 響「ふふ。 話したいならいつでも言えばいいよ。 」 提督「ありがとう。 …じゃ、昔話 つい最近のこと を話すとしますか…」 提督「俺は…あるところで仕事をしてたんだ…」 ——— 提督『いらっしゃいませ!』 〜 提督『あ、ああ、ご、ごめんなさい!』 ??『邪魔なんだよ!クソがッ!』 〜 提督『え…?』 ??『まあね?君が仕事中サボってるっていう話を聞くんだよ』 提督『え……あ…す、すみませんでした…』 ??『まあ私も現場を見てないから断定はできないけど。 以後気をつけて』 提督『…はい…』 〜 ??『何度言えばわかるんだ!!!』 提督『す、すみません…』 —— 提督「ってな感じで、ここまで至ったんだよ。 」 響「…」 提督「はは、俺がもうちょっと頑張ればちょっと違かったのかもね…」 響「……司令官…感謝するよ…」 提督「あはは、いいんだ。 ごめんね、なんか。 」 響「…じゃあ…そろそろ失礼するよ。 」 提督「あ、うん。 ありがとう。 じゃあ。 」 …ばたん… 響「…」 響「…」ギリッ ——————————- 提督「…この鎮守府に就き、しばらく経った…」 提督「なんとかヘマをしないように頑張って仕事して、艦娘のみんなに迷惑をかけないよう努力してるつもりだ」 提督「…だけど…」 提督「あの響ちゃんが来た日以降、みんながよく執務室に遊びに来てくれたり仕事を手伝ってくれたりもしてくれている。 」 提督「…極端に。 すごいの。 深夜にも来るの」 —————————— 深夜 執務室 提督「…く、くそ……睡魔が……」 提督「クラクラする…。 そういえばもう作業して14時間か…。 」 提督「だけど…終わらせないと…」 コンコン 吹雪「司令官?起きてらっしゃいますか?」 提督「…あ、ああ……起きてるよ…」 吹雪「失礼しま……え!?し、司令官っ!?」 提督「ど、どうしたの…吹雪……ちゃ……ん」バタっ 吹雪「しれいかーーーーーーんっ!?」 ————————— 提督「……すごい怒られたね。 あの頃吹雪ちゃんが偶然起きてなかったら俺は死んでただろう。 」 提督「だけどあの頃頑張ったおかげで今すごい楽できてる…」 提督「職場でもそれくらいの時間働いてたけど、ずっと座りっぱなしになるとやっぱりきついものもあるんだね。 」 提督「…と、そろそろお昼か…!」 ————————— 提督「この鎮守府には食堂はもちろんあるんだが、甘味処がない。 」 提督「飲み食いできる場所は食堂のみ、となっている…」 提督「…なんだか物足りない気がするけど、お昼になったら駆逐艦の子たちが必ず此処に来るからいいんだけどなぁ。 」 提督「…ロリコンじゃないよ?犯罪者じゃないよ?ちゃんとついて来てくれる子たちを大事にしてるだけだよ!!」 提督「自分はただ皆がだーいすk 「司令官ー!!」 吹雪「司令官っ!」 提督「お?あ、うん…!吹雪ちゃん、どうしたの?」 吹雪「一緒に私たちとお昼食べませんか?!」 提督「う、うん。 いいよ?」 吹雪「えへへ!こっちです!」 提督 …このように、すごい皆が俺に優しく接してくれるんだ。 提督 言わずもがな、響ちゃんにあの話をしてから極端に。 ———- 提督「結構いるんだね。 俺が入ってもいいの?」 吹雪「むしろ司令官と食べたいんですよっ!」 荒潮「あらぁ…提督、来てくれたのね!ほら、座って。 」 浜風「提督……」 荒潮「そんな感謝されるほどでもないわよぉ?」 吹雪「そうですよ!司令官は頑張られてますし!」 提督「……ここなら頑張っていけるよ。 …」ボソッ 吹雪「……司令官?どうされたんですか?」 提督「…あ、い、いやいや!なんでもないよ!さ!食べようか!!」 吹雪・荒潮・浜風・電「………」ギリッ ——————- 提督「ふぅ…ご馳走さま…。 」 電「電が片付けておくのです!」 提督「え?そんな、悪いよ。 」 電「電の本気を見るのです!!!」 提督「…行っちゃったし…。 」 提督「元気だなあ。 」 提督「今回は未開の海域に出発させたわけだけど大丈夫かなぁ…」 ———————— -夜 2100- 提督「…出発させた艦隊が帰還しない。 」 提督「出発させたのは、昼…1時ごろ。 」 提督「帰還予想時刻は午後6時だ。 」 提督「…何故だ。 」 提督「………」 『お前のせいだからな。 責任取れよ』 『すみませんでした…!自分の責任です…!』 『どうしてくれるんだ!!お前のせいで…!!!』 提督「……思い出したくない…」 提督「あのときは俺は悪いことはしてないはずだったのに…。 何故…」 提督「艦娘の皆が…襲撃を受け…俺の責任…俺の判断のせいでみんなが…っ…」 コンコン 提督「!?」ガタッ 提督「…は、入って…」 吹雪「失礼しますっ!」 提督「ど、どうしたの…?も、もしかして襲撃…!?出撃艦隊のみんなは!?」ガシッ 吹雪「へっ!し、司令官〜!?か、顔が近いですっ…!」 提督「ご、ごめん…で、でも…みんなが…」 吹雪「い、いや、司令官に帰還したっていうご連絡を…」 提督「…え?…い、今すぐにでもドックに…!!」 吹雪「司令官!?誰も負傷してませんよ!?」 提督「へ…?じゃ、じゃあなんでこんな時間に…」 吹雪「そ、それは……」 提督「…それは…?」 吹雪「遅れただけです。 帰還に。 」 提督「え?」 吹雪「航路を間違えてしまって…特に損傷や大きなことはありませんでしたっ。 」 提督「…じゃ、じゃあ怪我をしたとか…ないんだね…。 」 吹雪「申し訳ありません…。 司令官に余計なご心配をさせてしまって。 」 提督「……だ、大丈夫だよ〜…!み、みんなが無事帰ってきただけでほんとっ…よかった…」 吹雪「し、司令官…?なんで泣かれてるんですか…!?」 提督「ご、ごめん…色々…ね。 」 響「色々司令官は重いものを背負っているんだよ。 」 提督「響ちゃん…?」 吹雪「…」 響「司令官、君は前の職場の奴らからいじめられていたんだよ。 」 提督「…」 響「司令官は確実にそれを理解できていなかった。 そうだろう?」 提督「……わからない。 」 響「申し訳ないが、司令官が前話してくれたことをみんなに話した。 」 響「そういう運命にさせた人たちに怒りを感じるとともに、司令官を支持して切磋琢磨しようと決意したんだ。 」 吹雪「…司令官。 辛いことがあったら私たちに話してください。 私たちは、司令官を絶対に裏切ったりはしません。 」 提督「……少し整理したいことがある。 二人ともありがとう。 今日は一人にしてくれないかい?」 響「…ああ。 じゃあ失礼したよ。 」 吹雪「…失礼しましたっ…」 ————- 提督「…これまで俺が喰らってきたのは……」 提督「…俺が弱かったんだ…。 それを…みんなに教えられたんだ…。 」 提督「………。 」 ———— 提督『…すみませんでした』 『たくっ…もういっていいぞ。 』 提督「………』 『なあ君。 』 提督「…あ、すみません…』 『いやいや、謝ることはないさ。 何もしてないだろう?』 提督『……』 『…そんな暗い顔しないでくれ。 なあ君、今日昼は空いてるかい?』 提督『…昼…?……空いてますけど…』 『じゃあ、この近くにある喫茶店、知ってるかい?私と一緒に行こう。 』 提督『…はぁ…』 『じゃあそこで会おう。 』 提督『……』 〜〜喫茶店〜〜 提督『俺に何の用なんですか…。 』 『君、なんで言い返さないんだい?』 提督『…は…?』 『所々君を見ていて思っていたんだ。 真っ当に働いてるのに周りに流されるばかりで君は謝ってる。 』 提督『…』 『きみは間違ってないんだ。 不当なものなんだよ』 提督『…なんなんですか?…』 『…え?』 提督『なんなんですか。 いきなり…。 …全てを見てないのに俺に正しい正しいって…バカにしてるんですか!?』 『ち、ちがっ…私はきみのことを思って』 提督『関わりもない初対面の人に間違ってないって言われても、説得力なんざないんですよ…!!!いきなり首を突っ込まないで下さい!!!』 『えっ…』 提督『…はあ…はあ……すみません…』 提督『…代わりに払っておいて下さい。 お釣りは貰って下さい。 ……』 『な、なあきみっ…』 提督『…もう二度と俺に関わってこないで下さい…』 提督『…それでは』 バタンッ 提督「っ!!!」 提督「……ゆ、夢…。 」 提督「……もうなんなんだ…」 提督「あの人が言ってくれたこと…本当なのか…?」 提督「俺が弱すぎた…馬鹿みたいに周りを信じすぎてたんだ…」 提督「……」 由良「提督さん?」 提督「はっ!?!?」 由良「わっ…!?…寝起きから声大きすぎです…提督さん…」 提督「あ、ご、ごめん…由良ちゃんか…」 由良「とっくに皆、起きてますよ?提督さんも起きちゃって下さい。 」 提督「…あ、ああ…ごめんね。 ありがとう。 」 由良「いえいえ。 それでは由良は失礼しますね」 ばたんっ… 提督「今日も1日がんば……ごほん。 」 「司令官〜?いらっしゃいますか?」 提督「…吹雪ちゃん……いるよ。 」 吹雪「失礼します」 提督「…どうしたの、吹雪ちゃん。 」 吹雪「…昼過ぎから他鎮守府の方が来るとの連絡が…」 提督「え」 吹雪「いきなりの報告で私も驚きました。 」 提督「…あ、ああ…うん、わかった。 ありがとう。 」 吹雪「いえいえっ、これくらい当然ですっ。 」 … 提督「…他鎮守府…だと…?」 —— 提督「もうそろそろその「他鎮守府の提督」がくる時刻だ…」 提督「その提督が俺に何の用なんだろう…」 コンコン… 提督「あ、あ、どうぞ。 」 提督「……?!」 ??「やあ、お久しぶりだね。 女提督、と呼んでくれ。 」 提督「……なぜ…あなたが…」 女提督「駆逐艦の子たちと仲良くいってるみたいだね…。 」 提督「………」 女提督「…私は耐えられなかった。 」 提督「え…」 女提督「…仕事ぶりは完璧だったさ。 部署外では密かに評価する人間も少なくなかった。 」 女提督「…提督くん…君は…運が悪すぎた…」 提督「……」 女提督「バカにされ、手柄を奪われ、それでも君は耐えた。 」 女提督「だけど…気付けば今なんだ。 ……本当のことを知らず…奴等は君を飛ばした…!」.

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【加賀・艦これSS】提督「好嫌度CL?」

提督 ss クビ

この鎮守府はとても歪んでいた。 多くの戦果を挙げながら、艦娘達には一隻も轟沈はない。 それには秘密があった。 「この作戦も!前回も!ご自身を囮にする殲滅戦!危険です!」 そう。 この鎮守府の多大な戦果の秘訣は、提督の自身の命すら駒の様に扱う、自爆覚悟の殲滅戦。 敵の深海棲艦は提督という、最大の獲物に群がる。 提督というエサに集まった敵を艦娘の集中攻撃によって撃破、殲滅するという狂気染みた作戦だった。 目の前の提督はそれがどうしたという表情をとる。 いや、恐らくとったのだろう。 遮光カーテンにより窓からの明かりは室内には入らない。 時刻は昼過ぎだが、提督の執務机に設置された、電気スタンドと、長門の立つ位置の頭上の明かりだけだ。 執務室は薄暗い。 最も、部屋が明るくても長門には、提督の顔を真っ直ぐ見詰める覚悟が無かった。 長門自身のかつての罪の重さから、彼を直視出来ないのだ。 提督は抑揚の無い声で長門に言う。 「気にするな、俺の命なんぞ軽い物だ。 誰も傷つかず、挙げる戦果は大きい。 こんな楽な作戦、使わない手は無いだろう。 」 あまりにも自身の命を軽視する提督の発言に、長門は喰って掛かる。 」 長門のセリフに被せるように提督は言い放つ。 長門は提督の発言に顔を伏せる。 背筋を冷たい汗が落ちる。 提督は続ける。 「確か「提督など居ても居なくても変わらん!忌々しい!」だったかな?いや〜、まさか味方と信じた艦娘に砲撃までされるとはな!流石は41センチ砲だよ!でもな、寒くなると君の砲弾の破片の刺さった箇所が酷く痛むんだよ。 」 まるで楽しい昔話の様に、提督は言い放つ。 長門は何も言えない。 言えなくなった。 」 長門はすかさず提督に謝罪しようとするが、提督は手を挙げ中断させる。 「別に謝って欲しい訳じゃないさ。 ただ、俺は使える物は何でも使うだけだよ?例え自分自身でもね。 」 そう言って笑う提督の顔を執務机の灯りが照らす。 その顔は左のこめかみから左頬にかけての、酷い裂傷の痕があった。 [newpage] 「吹雪ちゃん、早くお昼ご飯に行くっぽい!」 「だ、大丈夫だよ〜夕立ちゃん。 まだ時間ならあるから。 」 駆逐艦寮の廊下を夕立、吹雪がはしゃぎながら歩く。 訓練を終えた彼女達二人は、お昼ご飯を食べに食堂へと急ぐ。 食堂は鎮守府の本館施設内にあり、駆逐艦寮からは渡り廊下を過ぎた先にある。 本館に入り、曲がり角を突き当たった先が食堂だ。 だが、吹雪と夕立は曲がり角を過ぎる直前に現れた人物を前に、慌てて顔を伏せ、道を空ける。 白い軍帽に白い軍服。 司令官だ。 だが、彼は彼女達を一切気にする素振りも見せずに執務室へと戻っていく。 しかし、そんな無愛想な司令官相手にすら、吹雪と夕立は顔を伏せながらの敬礼をする。 全ては彼女達が悪いのだから。 [newpage] 以前の鎮守府は提督の優しい笑顔と、艦娘思いの作戦から、笑い声が絶えなかった。 皆、提督を信頼し、提督も彼女達艦娘を大切に扱った。 しかし、事態は急変する。 」 「提督さぁー、魚雷で吹っ飛ばされたくなかったら近寄んないでくれないかなー」 「テートクー、何時になったら辞めるんデスカー?」 元々口の悪い艦娘のみならず、提督LOVE勢の金剛や榛名まで提督に対して暴言を吐く様になった。 次第に暴言だけでなく、暴力も加わる様になった。 通路を歩いていれば、跳び蹴り、過ぎ去りざまに殴るなど酷くなっていった。 提督はみんなの急激な変化に戸惑いながらも、問題を解決しようとした。 慌てふためき、弱っていく様は滑稽にすら思えた。 そしてある日、艦娘達は提督を司令室に呼び出した。 艦娘達と仲直り出来るならと、提督は何の疑いも持たずに司令室に向かった。 提督が司令室に入った事を確認した艦娘達は建物に対し攻撃を開始した。 空母勢は爆撃を、他の艦種達は砲撃を浴びせた。 瓦礫の山と化す司令室。 しかし、提督は九死に一生を得た。 全身に火傷や裂傷、骨折をしながらも一命は取り留めた。 万一の敵の攻撃の為、司令室は一番強固に出来ていたのが幸いした。 だが、敵に対する備えが味方からの攻撃を凌いだとは笑い話にもならなかった。 しばらくして、原因は解明された。 深海棲艦が艦娘に対する特殊電波を出したらしい。 この電波攻撃は艦娘を一種の洗脳状態にし、自身の大切なモノを憎むようになるというモノだった。 直ぐに妖精さんや大本営の技術者によって対策が取られ、事態は収束に向かった。 だが、傷跡は残った。 [newpage] 正気に戻った艦娘達は、全員が発狂するほど後悔した。 あれほど慕った提督を殺しかけたのだ、当然だろう。 大本営も、ここまでの事件になったからには艦娘全員の解体処分も止む無し!との通達を出す覚悟だった。 しかし、それは却下された。 何と被害者本人である提督が処分を差し止めたのだ。 艦娘達は只々提督に対する感謝と自責の念しか無かった。 こうなっては全員で提督に謝ろう! そして許しを乞おう。 提督が軍事病院から鎮守府へと戻って来た。 送迎の車から提督が降りる。 艦娘達は鎮守府正面に勢揃いし、出迎える。 しかし、提督の姿を見た艦娘達は息を飲んだ。 右耳は先が欠け、左腕は二の腕の途中から先が無く、顔には左のこめかみから頬にかけての裂傷が残っている。 あれでは軍服に包まれた肉体にも、言葉に表せない程の傷が有るだろう。 まず秘書艦であった長門が代表して、提督に謝罪する。 長門に続いて他の艦娘達も謝罪した。 しかし、それに対する提督の反応は、 「別に大した事じゃない。 ただの男がくたばり損なっただけだ。 」 と、言い放つと執務室に歩いて行ってしまった。 艦娘達は、何事も無かった様に行ってしまった提督に対して、どう接して良いのか分からなかった。 [newpage] 皆、提督に褒めて貰いたくて、戦闘では頑張った!大破しながらも姫級を沈めた!しかし、返ってきたのは、 「大破なんかするな。 」 の、一言だった。 始めは心配してくれてるのかと思ったが、淡々と 「後の作戦に支障が出る。 」 提督の冷たい視線。 この時、艦娘達は理解した。 彼は、ただ自分達に関心が無いのだと。 好きの反対は嫌いでは無く無関心。 この言葉は残酷だが的を得ていた。 「テ、テートクはケッコンカッコカリには興味は無いのデスカ?」 「悪いな、左腕が先から無いんだ。 指輪なんぞ着けられん。 」 「た、玉子焼き作ってきたの。 た、食べりゅ?」 「悪いな、玉子焼きは入院中の病院食を思い出す。 下げてくれ。 」 「て、提督。 」 艦娘達はどうして良いのか分からなくなった。 別段、酷い作戦や遠征を押し付ける訳では無い。 極めてクリーンな艦隊運営だった。 罵倒された方がまだ良かった。 殴ってくれても良かった。 提督は只々関心を持たなかった。 しかし、転機が訪れる。 ある日、榛名が敵戦艦と凄まじい砲撃戦を行った。 その時の榛名は、何処かおかしかった。 提督に相手にされず、自身の存在すら否定されたようで、どうせならばと敵戦艦と刺し違えるつもりで戦いに臨んだのだろう。 提督の撤退命令を無視し、単身敵艦と殴り合いの砲撃戦を行った。 しかし、危機一髪の所で僚艦であった比叡の援護により沈まずに済んだ。 しかし、榛名の行動は提督を幾らか動かしたのだろう。 鎮守府に帰投すると、 「撤退しろと言ったのに、どういうつもりだ!」 あれ程淡々と冷めていた提督が、榛名の轟沈未遂に声を荒げたのだ。 続いて、 「比叡!修復剤を使っても構わん! 入渠させろ!榛名の負傷を癒せ!」 提督自ら、艦娘の名を呼んだのだ。 名指しで呼ばれた比叡は勿論、榛名も嬉しさで目に涙が滲んでいた。 (元々優しいお方なのだ。 もう少し時間を掛ければきっと元通りになれる筈だ。 ) 艦娘達は小さな希望を見出した気がした。 [newpage] しかし、彼女達の考えは裏切られる事になる。 深海棲艦がある泊地に集結しつつある、という報が届いたのだ。 大本営より早急に撃破せよ!と、任務が降りた。 提督は秘書艦の長門を執務室に呼んだ。 「明日の日の出、深海棲艦はある方向を一斉に目指す。 此方は艦隊を二つに分け、待ち伏せ、十字砲火を浴びせろ」 というものだった。 長門は尋ねる。 「明日の日の出?一斉に?それは何故ですか?」 長門の問いは最もだ。 しかし、提督からの返事は 「必ず来る。 信用出来んか?」 出来ないなどと言える訳がない! 長門はただ了解と敬礼すると、執務室を出た。 」 長門の疑問は尽きないが、自分達は提督の信頼を得る為に尽くすしかない。 そして、日の出。 長門達の二つに分けられた艦隊は敵艦隊が一斉にある方角へと移動をするのを確認した。 後は行動に移すのみ! 全艦隊!攻撃開始!敵を撃滅しろ!」 二つの艦隊は攻撃を開始する。 戦艦、空母、重巡軽巡、駆逐艦。 全ての攻撃が交差する。 この待ち伏せ攻撃は完全に成功した。 敵艦隊は全く反応出来ず沈んでいった。 [newpage] だが、空母赤城の飛ばした攻撃隊の一機が小型の高速艇を発見する。 ボロボロに破損、汚れてはいるが、人間用の高速艇だ。 まだ動いている。 赤城は攻撃隊からの報告を受けて、長門に知らせる。 爆煙と砲煙の中から出てきたのは、軍用の高速艇だった。 そして艦娘達は中から出てきた人物に驚愕する。 「どうやら敵は全滅したようだな。 此方は一切被害なし。 大成功じゃないか。 」 高速艇から顔を出したのは提督だった。 白い軍服は黒く煤汚れていたが、怪我は無いようだ。 それに対しての返答は、 「俺が奴らを釣るエサになった。 そして、お前達の攻撃地点まで誘導した。 それだけだ。 」 いつものようにただ淡々と提督は言ってのける。 その直後、多くの駆逐艦や軽空母達が腰を抜かしてしゃがんでしまう。 そしてある者は青ざめ、幼い駆逐艦達は泣き出した。 それはそうだ。 自分達で提督を深海棲艦諸共殺しかけたのだ。 一部の戦艦や空母達が提督に食って掛かる。 単純な話だ。 」 と。 そして、艦娘を見渡し続ける。 「『あんな奴でも役に立つ時ってあるのかしら?』だったかな?誰のセリフか忘れたが、どうかな?役に立っただろ?」 艦娘達はここでようやく理解した。 彼は自分達に関心が無いんじゃない! この世の全て、自分自身にすら関心が無いのだ、と。 [newpage] 何の犠牲も出さずに敵艦隊を全滅させた提督に対し、大本営は勲章を授けた。 しかし、提督は執務机の引き出しにそのまま放り込んだ。 提督は軍人としての名誉すら、必要としていなかった。 それからも作戦は続いた。 提督の作戦自体は単純だ。 敵に対し、提督が自分達の近くの海域を通過するらしい。 という情報を流せば良いだけだ。 面白いぐらいに喰い付く。 」 ある者は砲を向けるのを涙を流しながら行い、 「ぜ、絶対にあの方には当てられない! タ、タイミングを見計らってやれば、だ、大丈夫。 」 ある者は自身に言い聞かせる様にブツブツと呟く。 何度も提督には、艦娘全員で思いとどまる様に嘆願した。 だが、提督の返事は決まって 「『役に立つ時がくるのかしら、このクズ!』だったかな?霞。 どうだい?俺は役に立っているだろう?」 それを聞いて霞は泣き崩れ、艦娘達は全員が黙る。 かつての自分達の発した言葉が、そのまま返ってくる。 提督をここまで追い詰めたのは自分達だ。 その中で、提督に引き合いに出された霞の瞳は、薄暗く染まりつつあった。 」 霞はフラフラと、港へと向かう。 茫然とする艦娘達は、霞一人居なくなった事に気付かない。 空に暗い雲が広がりつつあった。 [newpage] カーテンで仕切られた薄暗い執務室。 この部屋の主である提督はかつての戦時記録を見ていた。 手探りで始めた艦隊運営。 失敗を繰り返しながらも、敵泊地を攻め落とした。 提督の持つ記録ファイルには、祝勝会を開いた際の写真が収められていた。 写真の中の自分は艦娘達に囲まれ幸せそうに笑っている。 今の自分はもう笑い方すら忘れてしまった。 彼自身、彼女達が悪い訳では無い事は分かっている。 全ては敵の策略であると。 」 すると、執務室のドアを慌ただしく叩く音がする。 返事をすると駆逐艦の朝潮と秘書艦の長門がいた。 二人の顔色は蒼白だ。 何かがあったらしい。 」 普段の朝潮とは違い、今の姿は儚く、今にも倒れそうなほど動揺している。 提督はいつもの冷めた口調に戻る。 「何かあったのか?報告は的確に行え。 」 長門が提督の目を見ながら報告する。 「先ほどから霞が見当たりません。 」 長門の報告に提督は窓へと近付くと、 カーテンを開けて空を見る。 黒い雲が広がりつつあった。 提督の長年の海での生活からこの天気は荒れる!と、直感が告げている。 「提督!早急に捜索部隊の派遣許可を!」 長門は提督の背に声をかける。 朝潮も只々、頭を下げて懇願する。 「お願いします。 霞を!霞を助けて下さい!」 提督は瞑目する。 俺が霞を追い詰めたのか、当然か。 あんな態度を取っていれば、耐えられない奴だって出てくる。 何故だろう、何も満たされない。 艦娘をジワジワと追い詰めた自覚があり、達成された。 だが、無性に自分自身に腹が立つ。 ふと、机に置いたままになっていた記録ファイルが目に入る。 祝勝会の写真には、姉妹艦に囲まれている霞が写っていた。 [newpage] 『何やってるのよ?執務記録ならこの棚よ!ホントにノロマなんだから。 』 『し、仕方ないだろ。 こういった細かい作業、元々得意じゃねーんだよ。 』 『言い訳をしない!このクズ! どこの鎮守府でもこなしてる事よ! さっさと終わらせなさい!』 『わ、わかってるよ。 それに霞にも手伝って貰ってるし、すぐに終わるだろ。 ありがとう、いつも助かってるよ』 『べっ、別にたまたまヒマだっただけだしっ!それにノロマのアンタじゃいつまで経っても終わらないでしょっ! 仕方なくよ、仕方なく!』 『はいはい。 』 『返事は一回!』 提督は海を見つめる。 波が少し荒れてきていた。 「提督!どうかお願い致します!」 長門と朝潮は揃って頭を下げる。 長門は提督の返事を待った。 そして、 提督は目を見開いた。 「長門っ!空母を始めとした、艦載機を飛ばせる者を捜索に当たらせろっ! 航空戦艦も呼び出せっ!広範囲を捜索しろっ!」 提督の言葉に長門は安堵し、朝潮は涙ぐむ。 「了解した!直ちに艦隊を派遣する!」 提督の霞捜索が発令され、艦娘達は行動を開始する。 提督は館内放送で呼びかけた。 「霞が行方不明になった。 みんな、すまない!力を貸してくれ!」 緊急事態なのだが、皆は何故か泣きながら笑っていた。 自分達の提督が戻ってきたと。 [newpage] 「コンナ所ニ一人デ来ルナンテ、ヨホド自信ガアルノカ馬鹿ナノカ。 」 霞の目の前には、戦艦棲姫が蔑みの籠った視線を向けて立ち塞がっている。 霞は既に満身創痍と言っていいほどの損傷を負っていた。 主砲は曲がり、魚雷も撃ち尽くした。 最早、立っているのも不思議なくらいだ。 霞に砲を向けて薄く笑う。 霞は目を閉じ、誰に聞かせる訳でもなく「ゴメンなさい」と、呟いた。 すると霞の眼前で、爆発音がした。 霞はそっと目を開くと、戦艦棲姫が忌々しげにある方向を睨みながら、肩を抑えて呻いていた。 霞は視線の先を見る。 其処には赤城に加賀、長門に朝潮、摩耶と日向もいた。 摩耶が叫ぶ。 「ウチのモンに好き勝手やってくれたみてーじゃねぇか!ブッ殺されてーか!」 「鎧袖一触よ。 」 「一航戦の誇り、お見せします!」 「殴り合いなら私を忘れて貰っては困るな!」 「霞!今、助けるからね!」 「航空火力艦の力、見せてやる。 」 ここで完全に攻守が逆転した。 [newpage] 長門達は損傷の酷い霞を曳航しながら、帰途についていた。 霞は勝手な事をしたと落ち込んでいる。 そこに摩耶が声を掛ける。 「クヨクヨすんなよ。 そもそもお前を探せって言ったの、提督だぜ? 心配こそすれ、嫌ってなんかいねーよ。 」 長門も同意する。 「そうだ。 私と朝潮が捜索を依頼した時、提督自身、自分の行いを悔やんでいた。 大丈夫。 今の提督はかつての提督だ。 」 霞は顔を上げ、 「本当に?」 摩耶はニヤッと笑うと、鎮守府を指差した。 「見てみろよ。 港にでかい図体で、心配そうにウロウロしてやがるから。 」 [newpage] 「提督さん!夕立MVP取ったっぽい! 褒めて褒めて〜。 」 執務室で夕立が提督に甘えている。 「おう!報告書読んだぞ〜。 よくやったな〜。 」 夕立を膝に座らせ頭を撫でる。 本当に犬のようである。 霞を連れ帰った艦隊を、提督は出迎えた。 そして、霞に深々と頭を下げて謝罪した。 そして全員を会議室に集めると、皆の前でも頭を下げた。 『すまなかった。 ガキのようにいじけていた。 艦娘達も自分達もと謝り、謝罪合戦になりかけた所で、流石に止めた。 それから提督は、かつての提督へと戻った。 「資材の減りがヤケに早いな?長門、赤城と加賀にそれとなく注意しといてくれ。 多分あいつらだ。 え〜と、次は何々?『夜戦をもっと増やせ!』。 匿名にしても誰が書いたかすぐ分かるな。 神通に川内をシメるように言っといてくれ。 『カレーを作りました。 食べに来て下さい。 比叡』却下だ!却下!誰だ厨房に比叡を入れたの! 妖精さんに頼んで鍵を掛けられるようにしといただろ? えっ、壊して入った?不法侵入じゃねーか!」 提督は集められた艦娘達の要望書へと目を通していた。 そして独りごちる。 「最近やたらと、要望書が増えた気がするな」 それもその筈。 艦娘達は今まで提督に構ってもらえなかった分、やたらと甘えてくるのだ。 最も、提督も本気で嫌がっているワケでもない。 「ヘーイ!テートクー!tea timeにしまショー!」 金剛がtea セットを持ちながら執務室に入ってきた。 「お、もうそんな時間か。 喉も渇いたし、お願いするよ。 」 金剛は歌を口ずさみながら、紅茶を淹れてくれる。 提督は以前の殺伐とした鎮守府の雰囲気よりも、コッチの方が良いなと実感していた。 今も夕立を膝に乗せながら、長門を秘書に、そして金剛に紅茶を淹れて貰う。 幸せな時間であった。 すると、ドアを誰かがノックする。 返事をすると、大本営との連絡要員でもある大淀がいた。 「提督、大本営より査察官殿がお見えになっております。 お通ししてくれ。 」 執務室に少佐の階級章を付けた将校が入ってきた。 「大本営より来ました。 」 提督はソファーに対面する形で向かい合う。 後ろには秘書艦の長門、夕立、大淀、そして査察官の分の紅茶を淹れた金剛が控えた。 要約すると、この鎮守府の様子を見てくる様に。 と派遣されたらしい。 「ですが、安心致しました。 ここに来るまでの間に艦娘達を見かけましたが、皆、楽しそうに過ごしていたので問題無さそうですね。 」 提督はやはり来たかと思いながらも表情には出さない。 「ええ。 皆とても素晴らしい者達ですから助かっていますよ。 それと問題無いとは?」 其処で査察官も続ける。 「いえ、万一艦娘達との関係修復が難しい様で有れば、直ちに提督を保護せよとの命が降りていましたが、どうやら取り越し苦労だったようですね。 」 「何と!そうでしたか。 ですが心配は要りません。 彼女達との関係は良好ですしね。 」 提督の返事に査察官も安心したようだ。 その表情は青ざめて顔色が悪い。 」 査察官は提督の後ろに視線を向けている。 提督は訝しげに振り向くが、背後には長門に夕立、金剛に大淀がいるだけだ。 皆、提督にニッコリと笑みを向けてくる。 かわいい。 「査察官殿。 大丈夫です。 お気遣いなく。 そ、そろそろ失礼致しますっ!」 来訪してからニ十分も経っていない。 どういう事だ? 「えっ、もうそろそろ昼食の時間ですから良ければ召し上がっていっては? 我が鎮守府の鳳翔の腕は並みの料理人以上ですよ。 」 しかし、査察官は慌てて返事をする。 「いっ、いえ、此方も様々な案件を抱えてましてっ! これで失礼させて頂きますっ!」 キョトンとした提督を尻目に、査察官は部屋のドアへと向かう。 早く此処から逃げたくて仕方ない。 しかし、 「では提督。 私がお見送りしてきますね。 」 声を上げたのは大淀だ。 それに対して提督は、 「ああ、頼むよ。 では、査察官殿。 お気を付けて。 」 査察官は叫びたくなった。 [newpage] 執務室から正面玄関までの道のりを査察官は大淀の後に続いて歩く。 あの時。 提督と対面で座っていた時。 自分が提督を保護するという発言をした瞬間、提督の後ろに控えていた艦娘達が凄まじい殺意の籠った視線を向けてきた。 あの瞬間に自分は死を覚悟した。 大淀は此方を見ずに話し出す。 」 そう言って大淀は此方を振り向く。 暗く濁った瞳。 査察官は恐ろしくて仕方なかった。 冷や汗が噴き出る。 気付けば通路には自分と大淀しかいない。 しかも、来た時には外から聞こえていた駆逐艦の子達の声がしない。 静かだ、不安になるくらいに。 しかし、背後から何か視線を感じる。 ゆっくりと後ろを振り向くと、 ズラリと艦娘達が並んで自分を見ていた。 誰もが皆、濁った瞳をしている。 査察官は叫び声をあげそうになりながらも、後ろへと後ずさる。 査察官の肩に手が置かれた。 「大本営には、上手く、言っておいて下さいね。 」 査察官は何度も頭を振り了承した。 「それでは、道中お気をつけて。 」 艦娘達に見送られ査察官は正面玄関から逃げる様に早足で駆け出す。 鎮守府前に駐車中の車の後部座席に飛び込んだ。 運転手として待機していた武官が驚いて運転席から振り向く。 査察官は車の窓から鎮守府本館を見やる。 口元に笑みを浮かべている者もいるが、目は笑っていない。 その後、査察官は逃げる様に鎮守府から去って行った。 査察官は思った。 「私はまだ生きていたい。 死にたく無い。 」 「しかし、査察官って仕事も忙しないんだな。 あんなにバタバタして。 」 提督は金剛が淹れてくれた紅茶を飲みながら、溜息を吐く。 「まあまあ提督。 それよりそろそろ昼食にしましょう。 」 「ソウネー、テートク!今日は鳳翔の魚料理がオススメらしいネー!」 そう言いながら、金剛は提督の右腕にくっついてくる。 「金剛さん、ズルいっぽい! 夕立も提督さんと一緒っぽい!」 「こらこら。 歩きにくいだろ? まだ昼休みは時間あるから急がなくても大丈夫だ。 」 提督はぷりぷりと怒りだした夕立をあやしながら、食堂へと向かう。 三人の後に、秘書艦の長門が続いて執務室を後にする。 長門は前を歩く提督の背中を見つめながら呟く。 「彼は我々の導き手。 」 腕を組んで歩く金剛は、 「何処にも行かせないネー、テートク。 」 「「「もし彼に手を出すのなら、絶対に許さない。 海の藻屑に変えてやる。 」」」 それぞれ3人共、暗く濁った瞳をしながら歩いていく。 いや、彼女達だけでなく、この鎮守府の艦娘達は誰もが同じ目をしていたのだった。 この鎮守府はとても歪んでいた。 多くの戦果を挙げながら、艦娘達には一隻も轟沈はない。 それには秘密があった。 「この作戦も!前回も!ご自身を囮にする殲滅戦!危険です!」 そう。 この鎮守府の多大な戦果の秘訣は、提督の自身の命すら駒の様に扱う、自爆覚悟の殲滅戦。 敵の深海棲艦は提督という、最大の獲物に群がる。 提督というエサに集まった敵を艦娘の集中攻撃によって撃破、殲滅するという狂気染みた作戦だった。 目の前の提督はそれがどうしたという表情をとる。 いや、恐らくとったのだろう。 遮光カーテンにより窓からの明かりは室内には入らない。 時刻は昼過ぎだが、提督の執務机に設置された、電気スタンドと、長門の立つ位置の頭上の明かりだけだ。 執務室は薄暗い。 最も、部屋が明るくても長門には、提督の顔を真っ直ぐ見詰める覚悟が無かった。 長門自身のかつての罪の重さから、彼を直視出来ないのだ。 提督は抑揚の無い声で長門に言う。 「気にするな、俺の命なんぞ軽い物だ。 誰も傷つかず、挙げる戦果は大きい。 こんな楽な作戦、使わない手は無いだろう。 」 あまりにも自身の命を軽視する提督の発言に、長門は喰って掛かる。 」 長門のセリフに被せるように提督は言い放つ。 長門は提督の発言に顔を伏せる。 背筋を冷たい汗が落ちる。 提督は続ける。 「確か「提督など居ても居なくても変わらん!忌々しい!」だったかな?いや〜、まさか味方と信じた艦娘に砲撃までされるとはな!流石は41センチ砲だよ!でもな、寒くなると君の砲弾の破片の刺さった箇所が酷く痛むんだよ。 」 まるで楽しい昔話の様に、提督は言い放つ。 長門は何も言えない。 言えなくなった。 」 長門はすかさず提督に謝罪しようとするが、提督は手を挙げ中断させる。 「別に謝って欲しい訳じゃないさ。 ただ、俺は使える物は何でも使うだけだよ?例え自分自身でもね。 」 そう言って笑う提督の顔を執務机の灯りが照らす。 その顔は左のこめかみから左頬にかけての、酷い裂傷の痕があった。 [newpage] 「吹雪ちゃん、早くお昼ご飯に行くっぽい!」 「だ、大丈夫だよ〜夕立ちゃん。 まだ時間ならあるから。 」 駆逐艦寮の廊下を夕立、吹雪がはしゃぎながら歩く。 訓練を終えた彼女達二人は、お昼ご飯を食べに食堂へと急ぐ。 食堂は鎮守府の本館施設内にあり、駆逐艦寮からは渡り廊下を過ぎた先にある。 本館に入り、曲がり角を突き当たった先が食堂だ。 だが、吹雪と夕立は曲がり角を過ぎる直前に現れた人物を前に、慌てて顔を伏せ、道を空ける。 白い軍帽に白い軍服。 司令官だ。 だが、彼は彼女達を一切気にする素振りも見せずに執務室へと戻っていく。 しかし、そんな無愛想な司令官相手にすら、吹雪と夕立は顔を伏せながらの敬礼をする。 全ては彼女達が悪いのだから。 [newpage] 以前の鎮守府は提督の優しい笑顔と、艦娘思いの作戦から、笑い声が絶えなかった。 皆、提督を信頼し、提督も彼女達艦娘を大切に扱った。 しかし、事態は急変する。 」 「提督さぁー、魚雷で吹っ飛ばされたくなかったら近寄んないでくれないかなー」 「テートクー、何時になったら辞めるんデスカー?」 元々口の悪い艦娘のみならず、提督LOVE勢の金剛や榛名まで提督に対して暴言を吐く様になった。 次第に暴言だけでなく、暴力も加わる様になった。 通路を歩いていれば、跳び蹴り、過ぎ去りざまに殴るなど酷くなっていった。 提督はみんなの急激な変化に戸惑いながらも、問題を解決しようとした。 慌てふためき、弱っていく様は滑稽にすら思えた。 そしてある日、艦娘達は提督を司令室に呼び出した。 艦娘達と仲直り出来るならと、提督は何の疑いも持たずに司令室に向かった。 提督が司令室に入った事を確認した艦娘達は建物に対し攻撃を開始した。 空母勢は爆撃を、他の艦種達は砲撃を浴びせた。 瓦礫の山と化す司令室。 しかし、提督は九死に一生を得た。 全身に火傷や裂傷、骨折をしながらも一命は取り留めた。 万一の敵の攻撃の為、司令室は一番強固に出来ていたのが幸いした。 だが、敵に対する備えが味方からの攻撃を凌いだとは笑い話にもならなかった。 しばらくして、原因は解明された。 深海棲艦が艦娘に対する特殊電波を出したらしい。 この電波攻撃は艦娘を一種の洗脳状態にし、自身の大切なモノを憎むようになるというモノだった。 直ぐに妖精さんや大本営の技術者によって対策が取られ、事態は収束に向かった。 だが、傷跡は残った。 [newpage] 正気に戻った艦娘達は、全員が発狂するほど後悔した。 あれほど慕った提督を殺しかけたのだ、当然だろう。 大本営も、ここまでの事件になったからには艦娘全員の解体処分も止む無し!との通達を出す覚悟だった。 しかし、それは却下された。 何と被害者本人である提督が処分を差し止めたのだ。 艦娘達は只々提督に対する感謝と自責の念しか無かった。 こうなっては全員で提督に謝ろう! そして許しを乞おう。 提督が軍事病院から鎮守府へと戻って来た。 送迎の車から提督が降りる。 艦娘達は鎮守府正面に勢揃いし、出迎える。 しかし、提督の姿を見た艦娘達は息を飲んだ。 右耳は先が欠け、左腕は二の腕の途中から先が無く、顔には左のこめかみから頬にかけての裂傷が残っている。 あれでは軍服に包まれた肉体にも、言葉に表せない程の傷が有るだろう。 まず秘書艦であった長門が代表して、提督に謝罪する。 長門に続いて他の艦娘達も謝罪した。 しかし、それに対する提督の反応は、 「別に大した事じゃない。 ただの男がくたばり損なっただけだ。 」 と、言い放つと執務室に歩いて行ってしまった。 艦娘達は、何事も無かった様に行ってしまった提督に対して、どう接して良いのか分からなかった。 [newpage] 皆、提督に褒めて貰いたくて、戦闘では頑張った!大破しながらも姫級を沈めた!しかし、返ってきたのは、 「大破なんかするな。 」 の、一言だった。 始めは心配してくれてるのかと思ったが、淡々と 「後の作戦に支障が出る。 」 提督の冷たい視線。 この時、艦娘達は理解した。 彼は、ただ自分達に関心が無いのだと。 好きの反対は嫌いでは無く無関心。 この言葉は残酷だが的を得ていた。 「テ、テートクはケッコンカッコカリには興味は無いのデスカ?」 「悪いな、左腕が先から無いんだ。 指輪なんぞ着けられん。 」 「た、玉子焼き作ってきたの。 た、食べりゅ?」 「悪いな、玉子焼きは入院中の病院食を思い出す。 下げてくれ。 」 「て、提督。 」 艦娘達はどうして良いのか分からなくなった。 別段、酷い作戦や遠征を押し付ける訳では無い。 極めてクリーンな艦隊運営だった。 罵倒された方がまだ良かった。 殴ってくれても良かった。 提督は只々関心を持たなかった。 しかし、転機が訪れる。 ある日、榛名が敵戦艦と凄まじい砲撃戦を行った。 その時の榛名は、何処かおかしかった。 提督に相手にされず、自身の存在すら否定されたようで、どうせならばと敵戦艦と刺し違えるつもりで戦いに臨んだのだろう。 提督の撤退命令を無視し、単身敵艦と殴り合いの砲撃戦を行った。 しかし、危機一髪の所で僚艦であった比叡の援護により沈まずに済んだ。 しかし、榛名の行動は提督を幾らか動かしたのだろう。 鎮守府に帰投すると、 「撤退しろと言ったのに、どういうつもりだ!」 あれ程淡々と冷めていた提督が、榛名の轟沈未遂に声を荒げたのだ。 続いて、 「比叡!修復剤を使っても構わん! 入渠させろ!榛名の負傷を癒せ!」 提督自ら、艦娘の名を呼んだのだ。 名指しで呼ばれた比叡は勿論、榛名も嬉しさで目に涙が滲んでいた。 (元々優しいお方なのだ。 もう少し時間を掛ければきっと元通りになれる筈だ。 ) 艦娘達は小さな希望を見出した気がした。 [newpage] しかし、彼女達の考えは裏切られる事になる。 深海棲艦がある泊地に集結しつつある、という報が届いたのだ。 大本営より早急に撃破せよ!と、任務が降りた。 提督は秘書艦の長門を執務室に呼んだ。 「明日の日の出、深海棲艦はある方向を一斉に目指す。 此方は艦隊を二つに分け、待ち伏せ、十字砲火を浴びせろ」 というものだった。 長門は尋ねる。 「明日の日の出?一斉に?それは何故ですか?」 長門の問いは最もだ。 しかし、提督からの返事は 「必ず来る。 信用出来んか?」 出来ないなどと言える訳がない! 長門はただ了解と敬礼すると、執務室を出た。 」 長門の疑問は尽きないが、自分達は提督の信頼を得る為に尽くすしかない。 そして、日の出。 長門達の二つに分けられた艦隊は敵艦隊が一斉にある方角へと移動をするのを確認した。 後は行動に移すのみ! 全艦隊!攻撃開始!敵を撃滅しろ!」 二つの艦隊は攻撃を開始する。 戦艦、空母、重巡軽巡、駆逐艦。 全ての攻撃が交差する。 この待ち伏せ攻撃は完全に成功した。 敵艦隊は全く反応出来ず沈んでいった。 [newpage] だが、空母赤城の飛ばした攻撃隊の一機が小型の高速艇を発見する。 ボロボロに破損、汚れてはいるが、人間用の高速艇だ。 まだ動いている。 赤城は攻撃隊からの報告を受けて、長門に知らせる。 爆煙と砲煙の中から出てきたのは、軍用の高速艇だった。 そして艦娘達は中から出てきた人物に驚愕する。 「どうやら敵は全滅したようだな。 此方は一切被害なし。 大成功じゃないか。 」 高速艇から顔を出したのは提督だった。 白い軍服は黒く煤汚れていたが、怪我は無いようだ。 それに対しての返答は、 「俺が奴らを釣るエサになった。 そして、お前達の攻撃地点まで誘導した。 それだけだ。 」 いつものようにただ淡々と提督は言ってのける。 その直後、多くの駆逐艦や軽空母達が腰を抜かしてしゃがんでしまう。 そしてある者は青ざめ、幼い駆逐艦達は泣き出した。 それはそうだ。 自分達で提督を深海棲艦諸共殺しかけたのだ。 一部の戦艦や空母達が提督に食って掛かる。 単純な話だ。 」 と。 そして、艦娘を見渡し続ける。 「『あんな奴でも役に立つ時ってあるのかしら?』だったかな?誰のセリフか忘れたが、どうかな?役に立っただろ?」 艦娘達はここでようやく理解した。 彼は自分達に関心が無いんじゃない! この世の全て、自分自身にすら関心が無いのだ、と。 [newpage] 何の犠牲も出さずに敵艦隊を全滅させた提督に対し、大本営は勲章を授けた。 しかし、提督は執務机の引き出しにそのまま放り込んだ。 提督は軍人としての名誉すら、必要としていなかった。 それからも作戦は続いた。 提督の作戦自体は単純だ。 敵に対し、提督が自分達の近くの海域を通過するらしい。 という情報を流せば良いだけだ。 面白いぐらいに喰い付く。 」 ある者は砲を向けるのを涙を流しながら行い、 「ぜ、絶対にあの方には当てられない! タ、タイミングを見計らってやれば、だ、大丈夫。 」 ある者は自身に言い聞かせる様にブツブツと呟く。 何度も提督には、艦娘全員で思いとどまる様に嘆願した。 だが、提督の返事は決まって 「『役に立つ時がくるのかしら、このクズ!』だったかな?霞。 どうだい?俺は役に立っているだろう?」 それを聞いて霞は泣き崩れ、艦娘達は全員が黙る。 かつての自分達の発した言葉が、そのまま返ってくる。 提督をここまで追い詰めたのは自分達だ。 その中で、提督に引き合いに出された霞の瞳は、薄暗く染まりつつあった。 」 霞はフラフラと、港へと向かう。 茫然とする艦娘達は、霞一人居なくなった事に気付かない。 空に暗い雲が広がりつつあった。 [newpage] カーテンで仕切られた薄暗い執務室。 この部屋の主である提督はかつての戦時記録を見ていた。 手探りで始めた艦隊運営。 失敗を繰り返しながらも、敵泊地を攻め落とした。 提督の持つ記録ファイルには、祝勝会を開いた際の写真が収められていた。 写真の中の自分は艦娘達に囲まれ幸せそうに笑っている。 今の自分はもう笑い方すら忘れてしまった。 彼自身、彼女達が悪い訳では無い事は分かっている。 全ては敵の策略であると。 」 すると、執務室のドアを慌ただしく叩く音がする。 返事をすると駆逐艦の朝潮と秘書艦の長門がいた。 二人の顔色は蒼白だ。 何かがあったらしい。 」 普段の朝潮とは違い、今の姿は儚く、今にも倒れそうなほど動揺している。 提督はいつもの冷めた口調に戻る。 「何かあったのか?報告は的確に行え。 」 長門が提督の目を見ながら報告する。 「先ほどから霞が見当たりません。 」 長門の報告に提督は窓へと近付くと、 カーテンを開けて空を見る。 黒い雲が広がりつつあった。 提督の長年の海での生活からこの天気は荒れる!と、直感が告げている。 「提督!早急に捜索部隊の派遣許可を!」 長門は提督の背に声をかける。 朝潮も只々、頭を下げて懇願する。 「お願いします。 霞を!霞を助けて下さい!」 提督は瞑目する。 俺が霞を追い詰めたのか、当然か。 あんな態度を取っていれば、耐えられない奴だって出てくる。 何故だろう、何も満たされない。 艦娘をジワジワと追い詰めた自覚があり、達成された。 だが、無性に自分自身に腹が立つ。 ふと、机に置いたままになっていた記録ファイルが目に入る。 祝勝会の写真には、姉妹艦に囲まれている霞が写っていた。 [newpage] 『何やってるのよ?執務記録ならこの棚よ!ホントにノロマなんだから。 』 『し、仕方ないだろ。 こういった細かい作業、元々得意じゃねーんだよ。 』 『言い訳をしない!このクズ! どこの鎮守府でもこなしてる事よ! さっさと終わらせなさい!』 『わ、わかってるよ。 それに霞にも手伝って貰ってるし、すぐに終わるだろ。 ありがとう、いつも助かってるよ』 『べっ、別にたまたまヒマだっただけだしっ!それにノロマのアンタじゃいつまで経っても終わらないでしょっ! 仕方なくよ、仕方なく!』 『はいはい。 』 『返事は一回!』 提督は海を見つめる。 波が少し荒れてきていた。 「提督!どうかお願い致します!」 長門と朝潮は揃って頭を下げる。 長門は提督の返事を待った。 そして、 提督は目を見開いた。 「長門っ!空母を始めとした、艦載機を飛ばせる者を捜索に当たらせろっ! 航空戦艦も呼び出せっ!広範囲を捜索しろっ!」 提督の言葉に長門は安堵し、朝潮は涙ぐむ。 「了解した!直ちに艦隊を派遣する!」 提督の霞捜索が発令され、艦娘達は行動を開始する。 提督は館内放送で呼びかけた。 「霞が行方不明になった。 みんな、すまない!力を貸してくれ!」 緊急事態なのだが、皆は何故か泣きながら笑っていた。 自分達の提督が戻ってきたと。 [newpage] 「コンナ所ニ一人デ来ルナンテ、ヨホド自信ガアルノカ馬鹿ナノカ。 」 霞の目の前には、戦艦棲姫が蔑みの籠った視線を向けて立ち塞がっている。 霞は既に満身創痍と言っていいほどの損傷を負っていた。 主砲は曲がり、魚雷も撃ち尽くした。 最早、立っているのも不思議なくらいだ。 霞に砲を向けて薄く笑う。 霞は目を閉じ、誰に聞かせる訳でもなく「ゴメンなさい」と、呟いた。 すると霞の眼前で、爆発音がした。 霞はそっと目を開くと、戦艦棲姫が忌々しげにある方向を睨みながら、肩を抑えて呻いていた。 霞は視線の先を見る。 其処には赤城に加賀、長門に朝潮、摩耶と日向もいた。 摩耶が叫ぶ。 「ウチのモンに好き勝手やってくれたみてーじゃねぇか!ブッ殺されてーか!」 「鎧袖一触よ。 」 「一航戦の誇り、お見せします!」 「殴り合いなら私を忘れて貰っては困るな!」 「霞!今、助けるからね!」 「航空火力艦の力、見せてやる。 」 ここで完全に攻守が逆転した。 [newpage] 長門達は損傷の酷い霞を曳航しながら、帰途についていた。 霞は勝手な事をしたと落ち込んでいる。 そこに摩耶が声を掛ける。 「クヨクヨすんなよ。 そもそもお前を探せって言ったの、提督だぜ? 心配こそすれ、嫌ってなんかいねーよ。 」 長門も同意する。 「そうだ。 私と朝潮が捜索を依頼した時、提督自身、自分の行いを悔やんでいた。 大丈夫。 今の提督はかつての提督だ。 」 霞は顔を上げ、 「本当に?」 摩耶はニヤッと笑うと、鎮守府を指差した。 「見てみろよ。 港にでかい図体で、心配そうにウロウロしてやがるから。 」 [newpage] 「提督さん!夕立MVP取ったっぽい! 褒めて褒めて〜。 」 執務室で夕立が提督に甘えている。 「おう!報告書読んだぞ〜。 よくやったな〜。 」 夕立を膝に座らせ頭を撫でる。 本当に犬のようである。 霞を連れ帰った艦隊を、提督は出迎えた。 そして、霞に深々と頭を下げて謝罪した。 そして全員を会議室に集めると、皆の前でも頭を下げた。 『すまなかった。 ガキのようにいじけていた。 艦娘達も自分達もと謝り、謝罪合戦になりかけた所で、流石に止めた。 それから提督は、かつての提督へと戻った。 「資材の減りがヤケに早いな?長門、赤城と加賀にそれとなく注意しといてくれ。 多分あいつらだ。 え〜と、次は何々?『夜戦をもっと増やせ!』。 匿名にしても誰が書いたかすぐ分かるな。 神通に川内をシメるように言っといてくれ。 『カレーを作りました。 食べに来て下さい。 比叡』却下だ!却下!誰だ厨房に比叡を入れたの! 妖精さんに頼んで鍵を掛けられるようにしといただろ? えっ、壊して入った?不法侵入じゃねーか!」 提督は集められた艦娘達の要望書へと目を通していた。 そして独りごちる。 「最近やたらと、要望書が増えた気がするな」 それもその筈。 艦娘達は今まで提督に構ってもらえなかった分、やたらと甘えてくるのだ。 最も、提督も本気で嫌がっているワケでもない。 「ヘーイ!テートクー!tea timeにしまショー!」 金剛がtea セットを持ちながら執務室に入ってきた。 「お、もうそんな時間か。 喉も渇いたし、お願いするよ。 」 金剛は歌を口ずさみながら、紅茶を淹れてくれる。 提督は以前の殺伐とした鎮守府の雰囲気よりも、コッチの方が良いなと実感していた。 今も夕立を膝に乗せながら、長門を秘書に、そして金剛に紅茶を淹れて貰う。 幸せな時間であった。 すると、ドアを誰かがノックする。 返事をすると、大本営との連絡要員でもある大淀がいた。 「提督、大本営より査察官殿がお見えになっております。 お通ししてくれ。 」 執務室に少佐の階級章を付けた将校が入ってきた。 「大本営より来ました。 」 提督はソファーに対面する形で向かい合う。 後ろには秘書艦の長門、夕立、大淀、そして査察官の分の紅茶を淹れた金剛が控えた。 要約すると、この鎮守府の様子を見てくる様に。 と派遣されたらしい。 「ですが、安心致しました。 ここに来るまでの間に艦娘達を見かけましたが、皆、楽しそうに過ごしていたので問題無さそうですね。 」 提督はやはり来たかと思いながらも表情には出さない。 「ええ。 皆とても素晴らしい者達ですから助かっていますよ。 それと問題無いとは?」 其処で査察官も続ける。 「いえ、万一艦娘達との関係修復が難しい様で有れば、直ちに提督を保護せよとの命が降りていましたが、どうやら取り越し苦労だったようですね。 」 「何と!そうでしたか。 ですが心配は要りません。 彼女達との関係は良好ですしね。 」 提督の返事に査察官も安心したようだ。 その表情は青ざめて顔色が悪い。 」 査察官は提督の後ろに視線を向けている。 提督は訝しげに振り向くが、背後には長門に夕立、金剛に大淀がいるだけだ。 皆、提督にニッコリと笑みを向けてくる。 かわいい。 「査察官殿。 大丈夫です。 お気遣いなく。 そ、そろそろ失礼致しますっ!」 来訪してからニ十分も経っていない。 どういう事だ? 「えっ、もうそろそろ昼食の時間ですから良ければ召し上がっていっては? 我が鎮守府の鳳翔の腕は並みの料理人以上ですよ。 」 しかし、査察官は慌てて返事をする。 「いっ、いえ、此方も様々な案件を抱えてましてっ! これで失礼させて頂きますっ!」 キョトンとした提督を尻目に、査察官は部屋のドアへと向かう。 早く此処から逃げたくて仕方ない。 しかし、 「では提督。 私がお見送りしてきますね。 」 声を上げたのは大淀だ。 それに対して提督は、 「ああ、頼むよ。 では、査察官殿。 お気を付けて。 」 査察官は叫びたくなった。 [newpage] 執務室から正面玄関までの道のりを査察官は大淀の後に続いて歩く。 あの時。 提督と対面で座っていた時。 自分が提督を保護するという発言をした瞬間、提督の後ろに控えていた艦娘達が凄まじい殺意の籠った視線を向けてきた。 あの瞬間に自分は死を覚悟した。 大淀は此方を見ずに話し出す。 」 そう言って大淀は此方を振り向く。 暗く濁った瞳。 査察官は恐ろしくて仕方なかった。 冷や汗が噴き出る。 気付けば通路には自分と大淀しかいない。 しかも、来た時には外から聞こえていた駆逐艦の子達の声がしない。 静かだ、不安になるくらいに。 しかし、背後から何か視線を感じる。 ゆっくりと後ろを振り向くと、 ズラリと艦娘達が並んで自分を見ていた。 誰もが皆、濁った瞳をしている。 査察官は叫び声をあげそうになりながらも、後ろへと後ずさる。 査察官の肩に手が置かれた。 「大本営には、上手く、言っておいて下さいね。 」 査察官は何度も頭を振り了承した。 「それでは、道中お気をつけて。 」 艦娘達に見送られ査察官は正面玄関から逃げる様に早足で駆け出す。 鎮守府前に駐車中の車の後部座席に飛び込んだ。 運転手として待機していた武官が驚いて運転席から振り向く。 査察官は車の窓から鎮守府本館を見やる。 口元に笑みを浮かべている者もいるが、目は笑っていない。 その後、査察官は逃げる様に鎮守府から去って行った。 査察官は思った。 「私はまだ生きていたい。 死にたく無い。 」 「しかし、査察官って仕事も忙しないんだな。 あんなにバタバタして。 」 提督は金剛が淹れてくれた紅茶を飲みながら、溜息を吐く。 「まあまあ提督。 それよりそろそろ昼食にしましょう。 」 「ソウネー、テートク!今日は鳳翔の魚料理がオススメらしいネー!」 そう言いながら、金剛は提督の右腕にくっついてくる。 「金剛さん、ズルいっぽい! 夕立も提督さんと一緒っぽい!」 「こらこら。 歩きにくいだろ? まだ昼休みは時間あるから急がなくても大丈夫だ。 」 提督はぷりぷりと怒りだした夕立をあやしながら、食堂へと向かう。 三人の後に、秘書艦の長門が続いて執務室を後にする。 長門は前を歩く提督の背中を見つめながら呟く。 「彼は我々の導き手。 」 腕を組んで歩く金剛は、 「何処にも行かせないネー、テートク。 」 「「「もし彼に手を出すのなら、絶対に許さない。 海の藻屑に変えてやる。 」」」 それぞれ3人共、暗く濁った瞳をしながら歩いていく。 いや、彼女達だけでなく、この鎮守府の艦娘達は誰もが同じ目をしていたのだった。

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提督「風呂!」 : 艦隊これくしょん SS

提督 ss クビ

vip2ch. 今回の敵の動きは通信の後に急激に変化、こちらの警戒網をかいくぐっての襲撃でした」 大淀「もしも、通信の傍受がなされているのなら。 提督が死んだという噂を流して相手の出方を見る、というのはいかがでしょうか」 提督「それは……良いのか?」 大淀「混乱による誤報であれば、叱責程度で済むかと」 提督「それを受けるのは俺だろう……まあ、いいさ。 だが俺が姿を隠す間の報告はどうする?」 大淀「間宮さんと伊良湖さんを経由しましょう。 あの二人ならほかの艦娘とかかわる時間は少ないですから」 提督「そうか……わかった。 愉快な芝居ではないだろうが、ひとつ打ってみるとしよう」 大淀「では実際の伝達は各艦隊及び後詰めの旗艦までにして、後は全体放送で死亡を臭わせる報を出しますね」 提督「任せたよ。 さて、そうなると俺の隠れ場所とここからの脱出か」 大淀「艦娘達が報告に来る前に移動しましょう。 幸い、こそこそ逃げるには十分隙間がありますから」 提督「ああ……なにせ、建物自体がボロボロだからな。 全く夜の闇に乗じてとはいえ、鎮守府が攻められるとはとんだ失態だよ。 さすがにクビかな」 大淀「私には分かりかねますが、少しでも取り戻せば違うかもしれません。 では行きましょう。 ちょうど裏の雑木林まで通れるように崩れていますし、敵も撤退したようです」 提督「着替えだけは後で持ってきてくれよ。 執務室は半壊状態です』 『執務室には血痕がありましたが、遺体の確認はされていません。 もし提督を発見したら、すぐに司令部まで連絡を』 『また、昨日の今日ですから鎮守府近海に深海棲艦が滞留している可能性があります。 後方支援を含め全艦隊は厳戒態勢、予備隊及び非番予定だった艦娘のみで瓦礫の撤去、提督の捜索にあたります』 『では現時刻をもって長門秘書官を提督代理とし、艦隊の指揮を執ります。 以上、緊急放送終わり』 加賀「……」 赤城「加賀さん、顔色が悪いですよ。 少し休んだ方が」 加賀「いえ、大丈夫。 少し寝不足なだけ……行きましょう、直ちに抜錨して哨戒にあたります」 加賀「ええ、少し、頭が痛いだけ。 少し、息が、しにくいですが、大丈夫です」 赤城「加賀さん……」 赤城(酷い顔ね。 足取りも良くない、体も震えてる。 前線に出るのは難しいかしら) 赤城(誤情報による敵部隊のかく乱。 半分は司令棟へ向かい提督の捜索へ向かってください」 鳳翔「残り半分をさらに分割。 最優先は入渠施設、工廠です。 残りは運動場に帰還した艦隊の休む場所を設営します」 鳳翔(予備隊は駆逐艦が多いせいか動揺も大きいですね。 けれど本当の事を話しては……せめて深海棲艦が動きを見せるまでは) 鳳翔「では各自、全力を尽くすように! 私は間宮さん達と炊き出しの準備をしますから、何かあれば運動場へ来てくださいね」 鳳翔「……あら、朝潮さん。 どうかしましたか?」 朝潮「せ、僭越ながら、あの、よろしいでしょうか。 なぜ、司令棟を全員で探さないのですか? い、今すぐに、早く探さないと!」 鳳翔(涙はとっくに流した後……それはみなさん同じですね) 鳳翔「ええ、ですから半分の人員をあてがいます。 けれど、大淀さんの放送通り深海棲艦が近海に潜んでいる可能性もあります。 露払い程度ならともかく、大艦隊が居座っていた場合、入渠や補給ができないと嬲り殺しにされてしまいます」 朝潮「それは……ですが、司令官がいないと、指示が!」 鳳翔「既に長門さんが代理で指揮を執っています。 今は一刻一秒を争う時。 お喋りをする暇はありませんよ」 朝潮「っ……わ、わかり、ました……失礼します……」 鳳翔「……大丈夫、提督は無事ですよ。 あの人はこんな簡単に死ぬような人ではないでしょう?」 鳳翔(言えるのはここまで、ですね。 本当に人が悪い。 どれだけ好かれているか、自覚が薄いんですから) 鳳翔(本当に通信が傍受されているのなら、敵の動きも早いでしょう。 提督不在なら相手には好機のはず) 鳳翔「炊き出しも急がないといけませんね。 怒り狂ってたり意気消沈してたり、色々みたいね」 長門「『網』の方は?」 陸奥「そっちは順調よ。 幸いというか、こっちは湾だもの。 侵攻方向は一方向しかないから、島風を中心に高速艦でありったけの機雷を設置してもらってるわ」 長門「分かった……そろそろ時間だな」 陸奥「そうね。 どうする? 事情を知ってる旗艦だけに絞って、殉職確定の無線でも出してみる?」 長門「いや、どの無線が傍受されているか分からん。 今は誘い込みのために全体に出すべきだろう」 長門「まったく、嫌になるな。 さっき出て行った第五遊撃部隊の顔を見たか?」 陸奥「吹雪ちゃん達のところね。 金剛、北上、大井が殺気立ってるって泣きながら連絡が来たわ。 逆に加賀と瑞鶴は調子が悪いみたい」 長門「球磨型は全員姉妹だな。 どの部隊も手が付けられんらしい」 陸奥「お葬式で使えないよりはマシよ。 さ、提督の死亡の可能性が高まったことにしましょう。 艦隊の配置もそろそろ終わるわ」 長門「電撃決戦、か。 日暮れまでに終われると良いが」 陸奥「あら、もしかしたら通信傍受なんてなくて、敵さんも全員撤退してるかもしれないわよ?」 長門「それで終わればそれでよし。 警戒しつつ通信の変更、提督も見つかって一段落だ」 長門『定時連絡をおこなう。 提督の捜索状況だが芳しくない、全体の修復作業も遅れ気味だ』 長門『それと多少鎮守府の守りが薄くなるが哨戒中の艦隊は警戒網を広げるように。 イライラするんだよね、凄く、ねえ大井っち」 大井「ええ、それはもう! 引きずり出して引き千切っても足りないくらいです!」 加賀「……」 瑞鶴「……」 吹雪「あ、あの……加賀さん、瑞鶴さん、大丈夫ですか?」 加賀「大丈夫よ。 ええ、私は大丈夫。 頭が、少し、痛いけれど」 瑞鶴「……大丈夫な奴がいたら頭イカれてるわよ。 でも、仕事はするわ」 吹雪「は、はい。 握り飯だ、一つでも食べておけ」 大和「ありがとう、いただきます。 敵艦発見の報は?」 武蔵「まだらしいな。 しかし、ここに留まらねばならんのは口惜しいものだ。 もう少し足が速ければな」 大和「仕方ないわ。 私たちにできることは固定砲台として、敵が来たら叩き潰すまで。 機が来るまでは身を隠し、守りが薄いように見せないと」 武蔵「それはそうだ。 どれ、私も座禅でも組んでおくか……どうした?」 大和「……何か、空気が変わった気がする。 来るわ」 武蔵「そうか。 よし、抜錨準備と行くか」 大和「ええ、一匹たりとも逃がさないわ。 生意気な鼠は、すべて駆除しないとね」 武蔵「ふ、こそこそしている提督もそろそろ表に出してやらねばいかんからな。 司令官への愛情が薄いんちゃう?」 扶桑「そうかしら? これでもはらわたは煮え滾っているのだけれど……」 扶桑(私が旗艦じゃなくて提督の無事を知らされていなかったら、悲嘆したかもしれないわね) 龍驤「ま、その方がええよ。 愛宕もパンパカ言わへんし、隼鷹も酒飲む気にならなへんっちゅーし。 こっちまで気が滅入るわ」 扶桑「そうね。 でもそれくらい真剣に鎮守府と提督を想っているということでしょう?」 龍驤「んー……ちょい待ち、来よった! 五時の方向、一直線に鎮守府に向かっとる! 艦種は……あかん、戦艦、空母、重巡に鬼や姫までおる!」 扶桑「私も確認したわ。 こちら扶桑、敵艦隊を発見。 構成は姫級や鬼級の混在した全艦種。 数は確認されただけで40!」 長門『了解した。 既に大和型が抜錨している。 機雷設置部隊は後退、補給部隊に再編だ』 島風「りょーかい! 行くよ、急がないと敵が来るってさー」 天津風「ふうん……いい風。 これなら勝てるんじゃない?」 島風「なにそれ? てゆーか余裕じゃん、朝は提督がいなくて泣いてたのに」 天津風「ばっ!? ぐ、だ、だって生きてるんでしょ。 よくわかんないけど、作戦ってことだろうし」 島風「あー。 やっぱりそーだよね」 天津風「じゃなかったら朝まで無茶苦茶キレてた大和さんが、長門さんに呼ばれた後いきなり大人しくなったりしないでしょ」 島風「あれ怖すぎだったし……っと。 機雷設置部隊、後退完了です! これより補給部隊に合流します!」 大和「お疲れ様でした、後は任せてくださいね……一匹残らず吹き飛ばしてやるわ」 島風「はい! ……でもさー、やっぱりキレてるよね?」 天津風「キレてるキレてる。 11 ID:OPCbeEDk0 暗号…ミッドウェー…うっ!頭が….. 姫はほとんど倒せず、鬼も半分残して逃がすか……ここまでか……」 提督「すまん遅れた! 長門、今すぐ抜錨しろ。 アイオワ、ビスマルク、伊勢、ローマは護衛艦とともに包囲を維持したまま扶桑の穴を埋めるよう時計回りに移動!」 長門「提督! ここは任せた! 長門、抜錨する!」 大淀「後方にいる艦娘達への装備換装、抜錨も完了しました。 これで鎮守府は予備隊を残して文字通りもぬけの殻ですね」 提督「こちら提督、全艦隊に告ぐ! 驚く者も多いだろうが悪いが後にしろ!」 提督「こっちは轟沈なし、敵は姫と鬼を残して壊滅。 このまま逃がしても打撃を与えたには変わりない」 提督「だが、お前達の家を壊した敵をみすみす見逃せるか? お前らの中に、ぶん殴ったらそれで満足な奴がいるか?」 提督「敵は潰せ。 一匹逃がせば蛆のように湧いて出る。 わたくしはまだまだ忙しいのですけど、貴方はどうしますの?」 鈴谷「……言ってくれるじゃん。 どうもなにも、やれって言われたらやるだけでしょ」 熊野「あらあら、それなら良いのですけど。 さっきまで府抜けたツラでしたから、てっきり泣きべそ掻いて提督の所まで戻るかと思ってましたわ」 鈴谷「そんなの駆逐艦じゃあるまいし……っよし! 全力全開、行くしかないっしょ!」 熊野「あらまあ、本当に分かりやすい。 なら競争ですわ! より多くの敵を沈めた方が提督に抱き着く権利でどうですの?」 鈴谷「いや、意味わかんないんだけど。 っていうか敵って、後はほとんど鬼か姫じゃん?」 熊野「淑女たるもの姫の一匹も吹き飛ばしてナンボですわよ。 投げちまったらもう刀も使えなくなっちまったじゃねーか。 戦えないならさっさと戻れよな」 睦月「天龍さん! あ、あの、如月ちゃんが全弾撃つまではって」 天龍「あ? あー、なら他の駆逐艦に弾渡してさっさと戻れよ。 あのバカ提督、オレ達には心配させるくせに、自分が心配させられると怒りやがるからさ」 睦月「そうだよ如月ちゃん……早く戻ろう?」 如月「……そう、よね。 司令官に会えなくなる方がずっと嫌……ごめんなさい。 如月、離脱します」 天龍「おう。 睦月は戻ってくるときに弾の補充ありったけ頼む。 敵の、戦艦棲姫を討ち取ったぞ……鬼どもも、皆が倒してくれた』 提督「ご苦労さん、一旦引いて体を休めてくれていいぞ」 長門『心配ない、と言いたいところだが難しいな。 言葉に甘えさせて貰おう。 では、また後で』 提督「ああ……全艦隊、こちら提督だ。 長門が戦艦棲姫を撃破、これで残るは五体だ! 敵も疲弊している、現時点で戦線にいる者は包囲及び牽制を怠るな!」 神通『提督、敵は波に潜んで脱出口を探っているようです。 牽制弾で押し戻してはいますが、どうしますか?』 提督「破れかぶれの突撃はありそうか?」 神通『今のところその兆候はありませんが、この状態が続けばおそらく打って出るでしょう。 けど、私達もほとんど中破か大破で、とどめを撃つには……』 提督「分かった、そのまま包囲を続けてくれ」 提督「……予備隊! 後はお前たちに任せる。 川内以下六名、直ちに抜錨し敵艦隊を沈めてこい!」 川内『了解! こんなに良い夜戦なんてそうそう無いからね、一匹たりとも獲物は逃がさないよ!』 望月『ぅあー、めんどくせー……一発で沈んでくんないかなー』 文月『よぉーし、頑張るよぉ~!』 提督「……というわけだ。 それとも神通、お前に任せた方が良かったか?」 神通『ふふ、いいえ。 何か言いたい事ある?」 駆姫『ク……ミンナ……!』 川内「お、仲間が大事だった? でも残念、喧嘩を売ったからには仕方ない。 悪いとは言わないよ。 当たり前の反撃だもん」 川内「じゃ、おやすみ」 駆姫『ガ……ッ! ア、アア……あ、ああ……月が、きれい……』 川内「お、夜戦の良さがわかってるじゃん。 そうだよ、今日は月がとっても綺麗……もう沈んじゃったか」 川内「こちら川内。 提督、敵艦隊の全滅を確認したよ」 提督『そうか。 酒も食い物も解禁とする! みんな、よくやってくれた!」 提督「入渠施設のバケツも全て開放するから、帰還次第入渠、その後運動場に来てくれ。 以上、通信終わり」 提督「……やれやれ、本当に忙しい一日だったな」 大淀「ええ、まったくです。 それより提督、何人もの艦娘からいろいろな問い合わせが来ていますよ」 提督「……中身は」 大淀「生きていて良かった、という娘もいれば、怒り心頭の子もいますね。 上への報告は私が準備しておきますから、艦娘の説得はお任せします」 提督「おいおい……まあいいか」 大淀「あ、それともう一つ。 どうしてもという艦娘がいたので、一人だけ今お会いしていただけますか?」 大淀「なにぶん一番練度の高い艦娘ですから……カッコカリとはいえ、奥さんの怒りは旦那様が解いてあげてくださいね」 大淀「それでは失礼します。 78 ID:5QWVMBIk0 これでおしまいです。 徹頭徹尾突然で尻切れトンボ。 ありがとうございました。

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