君 から の アイラブユー なんて いらない から こっち おいで。 #ワートリ【腐】 #太刀川慶 アイ ラブ ユー【WT】

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君 から の アイラブユー なんて いらない から こっち おいで

Up all night on my mind got me thinking, Wanna stay, can you give me a reason? I don't think so, I don't think so 毎晩考えさせる。 一緒にいて欲しいんだ。 何か理由があるの?僕はそう思わないけど I'm in love with someone, but I'm not sure She can love someone back the way they love her I don't think so, I don't think so 僕らは恋に落ちていた、でもあれは真実の愛だったのかな。 彼女は僕に愛を返してくれてた?そうは思はないけど Don't be mean, if you wanna go You can leave and leave my heart alone 君が行きたいなら惜しいとも思わない。 僕の心と共に置いて行けばいい Waking up to nothing when you're super far from home And I watch you fall asleep at night and lay there on my own 君が遠くにいると何もないと気付かされる。 君が眠りにつくのを見守るんだ Got me begging for affection, all you do is roll your eyes Broken down, I've had enough, If this is love, I don't want it 愛が欲しいと願う。 君は呆れ顔のままだけどね。 別れたんだ。 僕には重荷だった。 これが愛なら僕は必要ないよ Give it time, come on babe, it's been ten months You should know, do you know, know what you what? I don't think so, I don't think so 時間が欲しい。 こっちにおいでよ。 あれから10ヶ月たったよ。 君は知るべきだ。 君が何を欲しかったのかを。 まぁそんなこと考えてもいないだろうけどね Make it work, know it hurts, but I'll go there Do the same, can you show me that you care? God, I hope so, but I don't think so うまくいくよ、少し辛いけど、でもそこに戻るよ。 同じこと。 君が僕を好きって証明できる?そうは思わないけどね Don't be mean, if you're here for good I'm gonna need a little time from you 君が行きたいなら惜しいとも思わない。 僕の心も一緒に置いて行けばいい Waking up to nothing when you're super far from home And I watch you fall asleep at night and lay there on my own 君が遠くにいると何もないと気付かされる。 君が眠りにつくのを見守るんだ Got me begging for affection, all you do is roll your eyes Broken down, I've had enough, If this is love, I don't want it 愛が欲しいと願う。 君は呆れ顔のままだけどね。 別れたんだ。 僕には重荷だった。 これが愛なら僕は必要ないよ All my friends keep saying that I'm way too good to you But my heart is so invested, I don't wanna face the truth 僕は君に尽くしすぎだと友達は言うけど僕はそれでも足りない。 僕は真実を受け止めたくないだけなんだ I'm not happy, and you know it, and you still don't even try Broken down, I've had enough, if this is love, I don't want it 幸せじゃない。 君はわかってても何も変わらない。 終わったんだ。 僕には重荷すぎた。 これが愛なら僕は愛なんていらない Waking up to nothing when you're super far from home And I watch you fall asleep at night and lay there on my own 君が遠くにいると何もないと気付かされる。 君が眠りにつくのを見守るんだ Got me begging for affection, all you do is roll your eyes Broken down, I've had enough, If this is love, I don't want it 愛が欲しいと願う。 君は呆れ顔のままだけどね。 別れたんだ。 僕には重荷だった。 これが愛なら僕は必要ないよ All my friends keep saying that I'm way too good to you But my heart is so invested, I don't wanna face the truth 僕は君に尽くしすぎだと友達は言うけど僕はそれでも足りない。 僕は真実を受け止めたくないだけなんだ I'm not happy, and you know it, and you still don't even try Broken down, I've had enough, if this is love, I don't want it 幸せじゃない。 君はわかってても何も変わらない。 終わったんだ。 僕には重荷すぎた。 これが愛なら僕は愛なんていらない 『Super Far』の歌詞解説 ご覧のように失恋の歌だということはわかっていただけたと思います。 しかし普通の失恋の歌とは少し違いますよね。 よくある失恋の歌は、「別れたけどまだ好き」「帰ってきて欲しい」という歌が多いと思います。 でもこの『Super Far』は、あまりそのような描写が描かれていません。 逆に「行きたいなら勝手に行きなよ」というような場面があります。 しかし僕の推測ではあるのですが、これは本心ではなく強がりで言っているだろうなと思います。 おそらく彼はプライドが高いタイプの人間なのでしょうね。 勉強用英単語• be mean phr …惜しくない• beg v …願う• affection n …愛情• break down phr …壊れる、別れる• invest v …投資する まとめ いかがでしたでしょうか? Lanyの歌は結構こんな感じで変わった失恋の歌が多い気がします。 独特の感性と、いい意味でクセのある歌声に僕は惚れてしまいました。 他にもたくさんいい歌があるので、そのうち紹介します。

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#ワートリ【腐】 #太刀川慶 アイ ラブ ユー【WT】

君 から の アイラブユー なんて いらない から こっち おいで

緑川駿は夢を見た。 どこともわからない室内に立っているところから、その夢は始まった。 真っ白い壁の、だだっ広い部屋であった。 どこかで見たような場所なのに、よく思い出すことができない。 四方が壁に塞がれていて、果たして自分はどのようにしてこの部屋に入ったのか、何のためにここにいるのか、全く見当がつかなかった。 ひどく、息がつまりそうな空間であった。 緑川は無意識に口を押えて、眉をしかめた。 その時、背後で何かが崩れるような、鈍い音がした。 ほとんど反射的に身体を反転させて身構えると、そこには先ほどまでいなかったはずの迅悠一の姿があった。 このような見知らぬ場所で、見知った、しかも非常に信頼を置いている迅悠一が現れたことで、緑川は一瞬自分は安堵したと思ったが、しかし唐突に現れた彼の身体はどこもかしこも傷だらけで、そんなわけにはいかなかった。 隊服は破れ、そこから覗く傷口はひどく痛々しく、血がしたたり落ちている。 このような迅の姿を、ただの一度も見たことがなかった。 迅は、いつでも緑川の前で、強かった。 強いなんてものではなかったかもしれない。 緑川は、迅悠一を信奉していた。 それはほとんど神のように、世界は迅の思い通りのものだと、思っていた。 だから、迅悠一が傷つくことなど、考えたこともなかった。 迅は、口の端から血を流しながら、言った。 「よう、駿じゃないか」 それはいつもと何ら変わらない笑顔だった。 右腕を上げ、こちらの方に手を振っている。 この時緑川は思った。 どこかがおかしい。 このようなことがあるはずはない。 半ば混乱する頭でただ迅を見つめていると、彼はこちらに一歩、足を進めた。 それだけで、足元はふらつき、緑川は、彼の身体はまるでとっくに死んでいるようだと思った。 「ごめんな、今日は、ぼんち揚げ持ってないんだ」 本当にすまなさそうに迅は言った。 「そんなことどうでもいいんです。 迅さん、どうしたんですかその怪我」 ひどく狼狽しながら、緑川は迅に一歩近づいた。 狼狽、という言葉が頭に浮かんだのは、ずいぶんと久しいことだった。 迅の身体からは相変わらず血がしたたり落ちている。 思わず足元に目を背けると、そこはすでに真っ赤になっていて、見慣れているはずの光景に、ひっと悲鳴を上げた。 ここから立ち去ってはいけないと、頭では分かっているのに、足がどうしても後ろに下がってしまう。 震えるように足が勝手に動いていく様を、迅はただ見つめていた。 「怖いのか」 彼はいつもと同じ目をしていた。 緑川の目、表情、もしかすればその奥の筋肉の些細な動き、血の流れ、そんなもの全て見透かしているような目だ。 この目の前で、けして嘘を吐くことができないというのは、緑川自身の、抗えない事実であった。 「血なんて、こわくない。 迅さんが傷ついてるのが、こわいんだ」 思った通りの言葉を緑川はそのまま口にした。 そうなのだ。 あの迅が、傷らだけで、自分の目の前に立っている。 その事実の恐ろしさを、どう説明すればよいのだろう。 ただひたすらに怖かった。 まるで、迅の身体だけでなく、緑川の体内まで、傷ついていくようであった。 「そうか」 ぴちゃと水の滴る音を鳴らしながら、迅は緑川が後ずさった分、足を前に進めた。 もう、逃げることはできなかった。 赤くなった、大きな手が、ぬっと緑川の手首に伸びる。 冷たいその手の温度に、思わず顔を上げると、やたらに真面目な表情がそこにあった。 それも一瞬だった。 もう緑川の身体は迅の胸元に収まっていた。 緑川は、迅悠一に、抱きしめられていた。 あまりにも自然な動きだった。 この瞬間、緑川は自分が狼狽していたことなどすっかり忘れていたのだった。 もう緑川の頭はうまく働いていなかった。 ただ、突然の迅の行動は、今まで緑川が密かに望んでいたものだった。 もうずいぶん前から、自分の命は迅悠一のものなのだ。 その命を完璧に所有されることほど、喜ばしいことはない。 どこも欠けてはいない、正しい形を持った、迅悠一という存在。 これまでの動揺が嘘のようであった。 迅悠一が、自分を、抱きしめている。 それだけで彼の狼狽はどこか遠くへ消えてしまったのである。 まるで床に散らばった本が勝手に本棚に戻っていくようだった。 迅悠一といることは、限りなく、秩序だったものであった。 「迅さん、迅さん」 「駿」 「迅さん、すきだ」 まるで子供に帰ったように、緑川は声を漏らした。 ずいぶん長い間胸の奥にためていた言葉は、あっけなく口をついて出た。 その言葉を聞いた迅は、ゆっくりと、緑川の身体をさらに引き寄せた。 「やさしいな、駿は」 「やさしいのは、迅さんだ。 だから、もうそんな姿、だめだ。 早く、手当てをして」 「駿」 辺りは静かだった。 迅の、名前を呼ぶ声だけが、鋭く響いていた。 緑川は、おそるおそる顔を上げた。 「駿は、やさしいよ。 俺はよく知っている。 だから、駿だけに、頼みたいことがあるんだ」 ゆっくりと背中に回した手をほどきながら、迅は喉がつっかえるほど優しい声音で言った。 「俺だけに?」 「ああ。 俺は、もう、こんな身体だから、もう、色々と、覚悟を決めなければならない」 迅は緑川の肩に手を置きながら言った。 真剣な面持ちだった。 悪い予感がどんどんとわいてきたが、何も言うことはできなかった。 完璧で正しい形を持った迅悠一は、いつだって正しい選択しかしないのだ。 「俺はね、この目が、誰かによくない方法で使われるのが嫌なんだ。 それだけは、避けなくちゃいけない」 「迅さん、待って、迅さん」 「やさしいな、駿。 だから、もっと、やさしくしてよ」 魔法みたいな言葉だった。 緑川の頭は緑川自身の意思を介することなく、身体を動かす信号を出した。 迅の手元には小さな果物ナイフがあった。 それと、目の前の迅悠一の整った顔、そこにある美しい瞳を見比べる。 緑川の身体はもう緑川のものではない。 目の前にある、完璧すぎる身体そのものが、もうすでに緑川と一体になっている。 腕は淀みなくナイフの元に向かった。 迅悠一のひどく満足そうな顔が見える。 ぞわりと胸の内からしびれるみたいな感覚が這い上がってくる。 迅さん。 迅さん、すきだ。 それが緑川の頭に最後に浮かんだ言葉だった。 鋭利な刃先が頬を伝うのを確認して、迅悠一はゆっくりと目を閉じた。 [newpage] 太刀川慶は夢を見た。 とにかくそれは久しぶりの夢だった。 自分の性質なのか、太刀川は日ごろから夢を見ることが少なかった。 しかし、その数少ない夢の中で、決まって出てくるのは迅悠一だった。 今回も、例に漏れず迅悠一が現れた。 眠っている間に彼を見るというのは、どこか懐かしいような気分だった。 場所は太刀川の自室であった。 太刀川は床に胡坐をかいており、迅はベッドの上に腰かけていた。 「それで、何の用なの」 迅は、事務的な口調で言った。 その言葉を聞いて初めて太刀川は、自分がこの部屋に迅を招き入れたのだと気がついた。 しかし、どうしても彼を呼び出した理由が思い出せない。 太刀川は少し困って、目を左右に泳がせた後、正直に言った。 「それが、思い出せないんだよ」 「思い出せないって」 迅は驚いたように、しかしどこか面白そうに言った。 「でも、いいじゃないか。 理由なんて、どうでも。 こうやってお前とふたりでゆっくり話すのも、久しぶりだろう?」 思ったままを口に出すと、迅は笑って、 「確かに、太刀川さんとゆっくり話すなんてひさしぶりだ」 と言いながら、ベッドに横になった。 そこは太刀川のベッドであったので、少しおかしな感じがした。 しかし、そこで太刀川には思い当たることがあった。 そう言えば、このようなことが、遠い遠い昔にあった気がする。 あれはいつだったのだろうか。 あまりにも昔のことで、よく思い出すことができない。 しかし、ベッドに横たわる迅悠一を組み敷いたことは、きっちり一度、あったのではないか。 ぎしりとスプリングの軋む音。 自分を見上げる目線。 息を吸う音と、吐く音と、手のひらからじんわりと汗の滲む音。 うつくしく曲がった鎖骨の線。 彼の、唇がゆっくりと動く。 「太刀川さん」 頭を殴られたような衝撃で、太刀川は目を見開いた。 迅は、身体を半分起こし、不思議そうにこちらを眺めていた。 頭の中から何かがわきあがるようで、くらくらとする。 何も返せないでいると、迅はまた、ゆっくりとベッドに横たわった。 その時、迅悠一は、確かに、にこりと笑ったのだった。 ベッドに横たわりながら、ただこちらを見て、口角を引き上げた。 そして、ああ、と太刀川は思った。 ああ、そうか。 こいつには、『視えて』いるのか。 それならば、と太刀川は考えることをやめた。 そして、ベッドに膝をかけて、迅の上に覆いかぶさった。 頭は妙に冴えていた。 「これって二回目?」 「さあ、よく覚えてないなあ」 この二回目という言葉を、迅がどう捉えたのか、そして自分も、どういう意図でこの問いを投げかけたのかは、よくわからない。 もっと言えば、自分が今、なぜ迅悠一に覆いかぶさっているのかもわからない。 そもそも、太刀川は、迅悠一に抱いている感情の種類を計りかねていた。 ずっとずっと、遠い昔からである。 遠い昔。 それはいつからなのだろう。 太刀川は、昔を振り返るという行為をめったにしなかった。 今日が昨日になれば、それは遠い昔である。 だが、迅については、違う。 本当に昔である。 きっと自分が迅と出会って、いや、そもそも自分たちはいつどうして出会い、そして出会ってから何をしたのだろう。 自分と迅の間に集積された体験記憶感情、それらはどこに行ってしまったのだ。 そうだった。 自分たちは、遠い遠い所へ、来てしまっていた。 それはもう、どこから来たのか、わからなくなってしまっているほどに。 太刀川はゆっくりと、迅の頬に手を伸ばした。 冷たい、きめ細やかな肌だった。 この感触を、もしかすれば覚えている気もするし、初めて触れるようにも思える。 俺は、セックスをしたいのだろうか。 太刀川は考えた。 迅を押し倒したということは、そういうことなのだろうか。 それは確かにある気がする。 しかし、きっとそれだけではない。 今、太刀川が迅を押し倒したのは、そんな言葉だけで片づけられるものではない。 悩むのは、また太刀川の習性ではなかった。 そもそも感情を計るという行為を、果たして最後にしたのはいつだろうか。 それでも、太刀川が自身の内面について少なくとも目を向けざるを得なくなっているのは、結局、迅悠一を押し倒してから行為に進めずにいるからである。 自分がこのあとにしたいのはセックスだったのか、それとも何か別のことなのか、それすら、太刀川は忘れてしまっていた。 頭と身体の一部が欠落してしまったような感じであった。 結局、太刀川は、迅の上に乗ったまま、腕組みをすることになった。 ひどく滑稽な姿であった。 「太刀川さん、何やってるの」 「考えてる」 「考えてる? 太刀川さんが? らしくないね」 迅はけらけらと笑いながら言った。 その表情に、太刀川は胸の中でじわりと湧き上がるものがあった。 どちらかと言えば、不快な感情であった。 そして、先ほど自分が思ったことが、もう一度頭に上った。 こいつには、『視えて』いるのか。 今度は途端にげんなりとした。 そして、自分がどうしてか性行為に進めなかった理由も、わかった。 いくら迅悠一とセックスをしても、彼は全て視えているのである。 それは太刀川にとって、面白くないことであった。 視えていても逃げないというのは、半ば同意だと受けとめていたが、そうではなく、誘えば簡単にセックスをする太刀川を笑っているのだった。 「お前、本当に、性格悪いな」 「それは、太刀川さんに言われたくないなあ」 似た者同士って言ってよ。 迅はそう言って誘うようにゆっくりと太刀川の頬に手を伸ばした。 その指先の温度の温かさに、太刀川もほとんどやけになって、唇を押しつけた。 下唇を噛むと、ゆっくり口が開いたので、無遠慮に舌を押し込んだ。 迅は全く抵抗しなかったし、太刀川も、自分の性欲なのか征服欲なのかなんだかよくわからない感情で胸が徐々に満たされていくのを感じていた。 服の間から手を突っ込んで肌をまさぐると、腕が首元に回される。 まるで自慰をしているようだと思いながらも徐々に息が上がってきて、唇を離す頃には二人の口元は唾液にまみれていた。 「お前、こうしてほしかったのか?」 「さあ。 少なくとも、太刀川さんは、したかったんだと思うよ」 迅は何とでもない風に言った。 「お前、もっと自分を大事にした方がいいよ」 「それは太刀川さんに言われたくないなあ」 その時、太刀川ははっきりと、「1回目」を思い出した。 なぜ思い出すことができたのだろうか。 記憶というものは、ひどく唐突に現れるのかもしれない。 本当に、遠い遠い昔のことだった。 太刀川は、確かに迅悠一を組み敷いて、キスをした。 確かにそれ以上のことはなかった。 ただ、その時迅悠一はかなしんでいたのだった。 もちろん、涙など流してはいない。 迅はそういう男だった。 だが太刀川さん、と名前を呼ぶ彼が、ひどくかわいそうに思えた。 こいつはかなしいんだなあ、と思って、くちづけたあと、太刀川は迅の瞳を見つめた。 黒々とした瞳が、こちらを見ていた。 ゆっくりとそこに触れると、どうしてか安堵したような迅の声が、聞こえてきた。 彼は全てを見ているのだった。 自分の気持ちも自分にこれから何が起こるのかも全てわかっているような顔をしている迅にやたらと腹が立つ。 何もかもに希望を持っているようで、何もかもを諦めているような顔だ。 太刀川は、そういう迅悠一のことが嫌いであった。 もしかすれば、それは嫌いという単純な感情ではなかったのかもしれない。 嫉妬や羨望、落胆、尊敬、畏怖。 ただ、全部を知って要るうような表情を彼がすることだけはどうにも許すことができなかった。 そこで初めて、太刀川は自分が迅悠一のことを、少なくとも嫌ってなどいないことに気がついた。 彼は視えている。 視えなければ、とは思わない。 だが、実は視えていても自分に組み敷かれるのは、セックスをしたいのでも、太刀川を笑っているのでもなく、ただなにかかなしいことがあるのだと、太刀川は思った。 太刀川は迅をかわいそうだと思った。 そして、全てが視えている迅悠一も、太刀川が自分をかわいそうだと思ってくれることをわかって、この場所にくるのであった。 「お前、かわいそうだよ」 かわいそうだよ、本当に。 正も負も栄光も名誉も軽蔑も懺悔も、全部ここにあるのだ。 こんなにわずらわしいものどもが、迅の瞳の中に巣食っているのだった。 太刀川はもう笑ってなどいなかった。 迅も、ひどく真面目な顔で太刀川を見ていた。 二人はもう何も言葉を交わさなかった。 ただ、じっと、瞳の中の黒々とした部分を、見つめ合っていた。 それでも互いの思うことは不思議とわかるようであった。 少なくとも、太刀川は遠い遠い迅の居場所のすぐそばにいるような心地が、していた。 太刀川はベッドのそばにある机の引き出しから、カッターを取り出した。 安っぽい音を出しながら刃先が出てくるのを、ふたりはただ見ていた。 顔を伝う刃先の温度に、迅が目を細める。 結局太刀川慶は迅悠一の思い通りに動く簡単な人間だった。 それでも、彼の思う通りに動くことは、太刀川慶が彼にできる最大の慈愛であった。 [newpage] 三輪秀次は夢を見た。 それは、ボーダーの任務についている夢だった。 いつもなら隊のメンバーといるはずなのだが、夢の中で、どうしてか三輪は迅悠一とともにいた。 迅と二人で任務をこなすことなど、今まであっただろうか。 三輪秀次は、迅悠一のことが苦手であった。 いっそ、嫌ってさえいた。 そんな迅悠一と任務につくことなど、考えられなかったが、もうすでに二人は走って目的地であろうどこかへと向かっていたのである。 夢の中ではあったのだが、忠義のある三輪は、すでに始まってしまったのだからと、すぐ前を走る迅の背中を仕方なく追いかけることにした。 迅は特に何もしゃべらなかった。 いつもは、わずらわしいほどにしゃべりかけてくるのだが、今日の彼はただ黙々とどこかに向かって走り続けている。 もちろん三輪にとってはその方が好都合だったので、少し安堵した。 ただ、彼がどこに向かっているのか、自分もどこに向かおうとしているのかわからなくて、不安な思いがした。 それでも行先を知っているらしい迅の元についていくしかない。 三輪は、走る速度を上げた。 三輪秀次は、迅の「甘ったれた」所が嫌いだった。 三輪がいつも考えるのは、亡くなった姉のことである。 姉は、近界民に、あっけなく殺された。 その情景をは、今でもしっかりと覚えている。 彼は近界民が憎かった。 だが、迅悠一はそんな自分のことをまるで子供をあやすように扱った。 三輪には、それが耐え切れなかった。 きっと未熟なのだろう。 それでも姉を軽く扱う迅のことは許せなかった。 いや、恐らく、姉のことではない。 自分のことで怒っている。 近界民への復讐に生きている自分を軽く扱うことが、許せないのだ。 そう思うと、三輪秀次は恐ろしいほどの無力感に襲われた。 自分は果たして、姉のために生きているのだろうか、自分のエゴのために生きているのだろうか。 何が正しくて何が間違っているのか、迅悠一の前では何もかもわからなくなる。 自分の進むべき道が見えなくなる。 迅の前で、三輪はただただ無力だった。 いつも自分の先にいて、全て知ったように、自分の過ちに気づかせるように、やさしく頬をなでる。 それはまるで自分の信じているものが否定されて、三輪秀次という存在を形作るものが全て奪われていくようだった。 だから、三輪は迅のそばにいることが、とてつもなく嫌いであった。 ふと、迅悠一が立ち止まった。 何事かと思って伺うと、彼は、どこか遠くの方を眺めていた。 その時何を見ているのか、三輪はよく知っていた。 いったん目を閉じて、迅は三輪の方へと向き直った。 「敵は、こっちには来ないみたいだ。 もう少ししたら、本部の方へ向かってくる。 引き返そう」 そう言って、次は本部の方へと連絡を始めた。 三輪は、まず肩透かしを食らったような気分になった。 だがそれからすぐに、本部に連絡をしている迅の横顔を見た途端、どうしてだか急に腹が立ってきた。 自分でも、驚くような感情のうねりだった。 頭では冷静にいようとしているのに、腹の底から苛立ちがわきあがってきて、このままではいけないと、理性に訴えかけてきている。 自分は一体どうしてしまったのだろうか。 目の前が赤くちかちか光る。 連絡を終えた迅が、三輪に向かって口を開いた。 「秀次、帰ろう。 俺のサイドエフェクトがそう言ってる」 迅は、笑顔だった。 その瞬間頭の中が、真っ黒になった。 三輪は、静かに銃口を迅に向けていた。 頭で考えたのではなく、身体が勝手に動いたのだった。 彼と走り続けてからどれくらいの時間が経っていたのだろう。 彼と二人でいることが、こんなにも自分の枠組みを崩すことになるとは思っても見なかった。 三輪はもう限界であった。 自分が自分でなくなっていくようであった。 迅は、何も言わなかった。 そして、ただひたすらやさしい笑みを浮かべていた。 それは三輪の大嫌いな表情だった。 かっとなって、三輪は迅の肩を掴んで、床に倒し、その上に馬乗りになった。 迅は、全く抵抗しなかった。 「どうして、お前は」 絞り出すような声が口をついて出てきた。 自分でも聞いたことのないようなか細い声だった。 「未来のことばかり見るんだ」 辺りは静かだった。 三輪は、言葉が口から出てきて、初めて自分が何を言って、何を考えていたのか認識した。 今まで三輪の胸の奥にあった、苛立ちや怒りや悔しさと言った言葉でしか表すことのできなかった、もやもやとした感情。 それの名前が、今初めて三輪の口から出てきたのであった。 自分が迅悠一を嫌いな理由は、そこだった。 あまりの事実に、しばらく三輪は目を見開いて呆然としていた。 何が起きたのか、自分でも把握できない。 それなのに、迅は相変わらずやたらにやさしい瞳でこちらを見てくる。 彼は自分にとって未来そのものだったのだ。 姉のいない、未来だ。 三輪はまだそこへは行きたくなかった。 ずっとここにいたい。 姉のいたところで生きていたい。 迅の存在は、三輪の存在を外から壊すものだったのだ。 耐えられない思いがした。 自分を保ってきた芯の部分が溶けて消えてしまう思いだった。 もう頭は働いていない。 三輪は、感情を正確に表現する機械のようになっていた。 「未来なんて、いらないのに」 三輪秀次は、ただ呆然としていた。 感情に支配されていた身体は、脳の元に帰っていた。 手元には、血の滴っている刃物が残っている。 手のひらにはまだ、柔らかいものをえぐった感触が、生々しく残っていた。 手が震えていた。 何てことをしてしまったのだろう。 手の震えを抑えようとしても、身体が言うことを聞かない。 違う、こんなことをしたかったわけではないのに。 後悔は胸の底からわきでて、胃の中に逆流していった。 刃物が、ことりと床に落ちる。 震える手で、頭に手を伸ばすと、ぬっと、何かが三輪の手首をつかんだ。 迅悠一の手だった。 温かい手だ。 やさしい手だ。 三輪は、泣きそうになった。 どうして彼はこんなにもやさしい形をしているのだろう。 「秀次、泣いてるのか」 手首をつかんだ手は、ゆっくりと、三輪の頬を伝って、目元をぬぐった。 その時初めて、三輪は自分が泣いていたことに気がついた。 こと感情に関して、三輪の思考は常に身体の後手に回っているのであった。 「やさしいなあ、秀次は」 心の底から、嘘のない言葉だった。 こんなことをしても意味はない。 三輪は、自分で自分の未来を閉ざしてしまった。 迅の目は、もう未来を映すことはない。 彼の瞳があった場所は、真っ赤に染まって、どうなっているのかもわからなかった。 それでも迅はやさしい瞳でこちらを見ていた。 少なくとも、三輪にはそう感じることができた。 過去は恐ろしいものだ。 どれだけ悔やんでも、戻ってくることはないのだ。 そして、目の前には間違ったという事実だけが横たわっている。 三輪が間違っている時、迅はいつだってやさしく、それはやさしく彼を引き留めるのだった。 [newpage] 迅悠一についての噂が流れはじめたのは、それから少し経ったころだった。 玉狛支部に所属している迅の姿の姿が見えないことは、特に変わったことではなかった。 それでも、林藤支部長が本部でせわしなく動いていること、上層部が会議室に篭ってほとんど出てこないことから、何か大きなことが起こっていることは事実のようだった。 それからすぐに、今度はボーダーの隊員の何人かが姿を消したとの噂が広がりはじめた。 実際に、ボーダーの任務は休止状態で、ランク戦も中止になっていた。 A級戦闘員は、あまり自室の外を出歩かないようにとの指示を受けた。 そうこうしているうちに、今度は目元に包帯を巻いた迅悠一を見たとの噂が出てきた。 それが本当ならば、迅悠一は生きているということになる。 数々の隊員が姿を消したことで、一時は死んだのではないかとの説も囁かれており、大勢を占めていたが、生存説も根強く唱えられるようになった。 だが、それが本当だとして、果たしてなぜ迅悠一の目が隠されているのか、そして他のA級隊員との関連はあるのかについては謎のままであった。 「このまま、どーなっちゃうんですかね」 腕の中で、佐鳥がぼそっと呟いた。 口に出さずにはいられない不安がそこにあった。 出水も、これからどうなってしまうのか、全く見当もつかなかった。 佐鳥の顔を胸元に引き寄せると、佐鳥も出水に身体を寄せる。 暖かな体温に、身体から緊張が抜けていく。 足を絡めると、佐鳥もからめ返してくる。 布団のぬくもりの中で、佐鳥がそばにいることは、何よりの安心だった。 きっと、愛は複雑な物なのだろうな、と思った。 愛は様々な形をしていて、届かない愛もあれば、どうにもならない愛もある。 もしかすれば、狭い意味での愛ばかりでないのかもしれない。 自分には、愛がよくわからなかった。 それでも誰かが誰かを思うことは、知らないことではなかった。 思うことはしあわせなことであるはずなのに、どうしてうまくいかないことがあるのだろうか。 そのかなしみを思うと、ひどく憂鬱な気分になった。 自分は佐鳥が好きであるし、佐鳥も、自分が好きである。 佐鳥が、そばにいなければ、自分は何かを思うことができても、しあわせにはなれなかったのかもしれない、と出水は時たま思う。 かなしいことはある。 きっとある。 水風船が割れるみたいに、はじけてとぶ愛もある。 それでもそうして流れていった愛に、思いを巡らせずにはいられない。 思いそのものは幸福なのだから。 出水は、幸福になれなかった数々の思いを思った。 きらきらと輝くそれが、何物も傷つけず、自分も傷つけず、願いをかなえればいいのに。 途端に出水はさびしくなった。 そして、こんなさびしい夜には、佐鳥にそばにいてほしいと思った。

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はにかむハニー 50話 9巻 ネタバレ注意

君 から の アイラブユー なんて いらない から こっち おいで

今読み返すとソートー恥ずかしい部分もあるが、とりあえずそのままアップすることにした。 思う存分笑って頂きたい。 で、結局は、曲を聴かないと何が何だか分からん構成なんだが、ネット上ではどうしようもないので、今回はテキストのみにした。 だったら、wavとかmp3で対処せんかい、と言われても、そんな面倒くさいことはしません。 この文章で万が一クイーンに興味を持たれた方は、筆者までカセット希望のメールを送るか、自力でCDを手に入れてください。 【生徒】 老師、フレディ・マーキュリーが死んだそうですね。 【老師】 ………… 【生徒】 あの…… 【老師】 ………… 【生徒】 何か言ってくれないと困るんですけど。 【老師】 合掌。 【生徒】 それは分かりましたから、もう少し実のあることを。 【老師】 フレディ・マーキュリーは永遠に不滅です。 【生徒】 長嶋じゃないんですから。 【老師】 じゃあ、一体何を言えって言うんだよ? 【生徒】 老師、落ち着いてください。 この対談の趣旨を忘れていませんか? 【老師】 そんなもん、あるのか? 【生徒】 あのねえ、巷で安易に流れるクイーンにむかつくって言ったのは老師でしょ。 それで俺が真のクイーン道を説いてやるって言ったでしょうが。 【老師】 ああ、だんだん思い出してきたぞ。 『セイヴ・ミー』がフレディの作品だなんて書きやがった雑誌があったんだ。 あれはブライアンなんだよ、馬鹿野郎! 【生徒】 老師、ちょっと下品になってませんか。 【老師】 いや、つい我を忘れてしまった。 すまんすまん。 【生徒】 とにかく、僕もクイーンはほとんど知らないんです。 最近、よく「ママミヤレッミーゴー」とかいう歌を聞くんですけど、題名も知らないんです。 もうひとつ、ついでに言っちゃえばフレディ以外のメンバーの名前も知らないんですけど。 【老師】 まあ、君も若いから無理もあるまい。 クイーンなんて二十代前半以下の世代はロクに知らんだろうな。 俺ぐらいが最後だろう。 【生徒】 老師は何年生まれなんですか? 【老師】 1965年、ザ・フーのデビューの年だ。 【生徒】 あの、ざふーって何なんですか? 【老師】 お前、フーも知らんのか? 3大ブリティッシュ・バンドのひとつで、ロジャー・テイラーのフェイバリット・グループだよ。 【生徒】 あの、ロジャー・テイラーって誰なんですか? 【老師】 ええ加減にせえよ。 ロジャーはクイーンのドラマーやろが。 【生徒】 だから、さっき言ったでしょ。 クイーンのメンバー名も知らないって。 【老師】 あ、そうだったな。 【生徒】 まあ、老師もイラつくでしょうから、とりあえず一曲行きましょうか。 【老師】 お前はDJか。 勝手に仕切るな。 【生徒】 まあ、情緒不安定なのは分かりますから、どの曲にします? 【老師】 そうだな、ほんじゃあ、『シーサイド・ランデヴー』でも行くか。 『シーサイド・ランデヴー』1975 【生徒】 何ですか、これは? 【老師】 驚いたかね、生徒君。 クイーンは単なるそこいらのロック・バンドとは違うのだよ。 カテゴライズ不能というのがクイーンの魅力なのだ。 そしてその魅力の源泉はフレディの飛び抜けてエキセントリックな美意識と才能にあるのだ。 【生徒】 何だかよく分からないんですけど、先にメンバーの名前を教えてもらえませんか。 【老師】 よしよし、ヴォーカルとキーボードがフレディ・マーキュリー、ギターとヴォーカルがブライアン・メイ、ベース・ギターがジョン・ディーコン、ドラムスとヴォーカルがロジャー・テイラーだ。 【生徒】 で、リーダーはフレディなんですか? 【老師】 いや、クイーンにはリーダーはいないんだ。 作曲数からいうとフレディ3.5、ブライアン3、ロジャー2、ジョン1.5ぐらいなんだが、バンド運営上は四者一致の完全ミーティング制度が貫かれていたんだ。 【生徒】 そうなんですか。 【老師】 今日は時間もないので、フレディ中心に話していこうと思ってるんだが、クイーンは4人の有機結合体だということをちゃんと覚えておくように。 【生徒】 それで、次はどれにします? 【老師】 さあ、泣け。 『ラブ・オブ・マイ・ライフ』だ。 『ラブ・オブ・マイ・ライフ』1975 【老師】 ………… 【生徒】 ………… 【老師】 ………… 【生徒】 老師が泣いてどうするんですか。 まったくもう。 【老師】 やかましい。 誰がこのメロディーを聞いて泣かずにおれようか。 いや、おれない。 【生徒】 何でここで漢文の反語の練習をしなきゃいけないんですか。 【老師】 中間部のピアノを聞いたか。 何という気品高く、もの悲しい旋律であろうか。 そしてラストのハープシコードの余韻。 ああ、女王は何故にかくも美しいのか。 これやからおたくは難儀やなあ。 ) 【老師】 おい、聞いてんのか? 【生徒】 聞いてますよ。 【老師】 では、感想を述べよ。 【生徒】 確かにとても美しい曲ですね。 でも、2曲聞いた限りでは優秀なラブ・ソングライターに過ぎないような気もしますけどね。 【老師】 フッフッフッ。 どうせそんな答えだろうと思っていたよ。 では、そんな君にこの曲を捧げよう。 『伝説のチャンピオン』1977 【生徒】 誇大妄想狂ですか、この人は? 【老師】 まあ、そう言えなくもないがな。 彼は根っからのナルシストなんだ。 世界中で自分が一番悲しい男だと思ってるんだ。 本当に自分を分かってくれる奴がいるなんて頭から信じない。 現実世界には適応できないんだ。 だから絵の具で塗り固められた耽美世界へのめり込んで行った。 『ラブ・オブ・マイ・ライフ』や『シーサイド・ランデヴー』が彼の耽美世界の反映だとすれば、『伝説のチャンピオン』はその裏返しの現実世界への挑戦状なんだ。 【生徒】 要するに分裂症なんじゃないんですか? 【老師】 分裂症というのとはちょっと違う。 彼にとって愛への探求と世界への挑戦は同じ目的なんだ。 恋愛の幸福を求めつつ、それが決して充たされることのないものであることを彼は知っている。 だから、世界に唾を吐くことによって、そんな自分を奮い立たせるのだ。 【生徒】 じゃあ、そのコインの裏表を見なければフレディは理解できないということですね。 【老師】 そういうことだ。 彼は自分の劣等心、といっても回りには中々分からないものなんだが、そういうマイナスのパワーをプラスのパワーに昇華させていたんだ。 だから、寂しがりのピアノ弾きという見方も、自信過剰のヴォーカリストという見方のどちらも片寄ってるな。 どっちもフレディ自身なんだから。 【生徒】 ところでこの曲、売れたんですか? 【老師】 売れたも売れた。 全米1位だ。 これでついに全世界制覇を成し遂げたのだ。 アルバム『世界に捧ぐ』は300万枚だ。 文句あるか? 【生徒】 別に文句はありませんけどね。 で、前の2曲は何ていうアルバムに入ってるんですか? 【老師】 言い忘れてたな。 『オペラ座の夜』だ。 世間一般ではクイーンの最高傑作と言われている。 じゃあ、次だ。 『永遠の翼』1977 【生徒】 これはまたガラッと感じが違いますね。 とても聞き易いし、すぐ口づさめそうだし。 【老師】 それもそのはず、これはベースのジョンの作品だ。 【生徒】 フレディ・マーキュリー追悼じゃなかったんですか? 【老師】 フレディのばかり聞いてると初心者は肩が凝るんじゃないかと思ってな。 それにこういう曲の方が彼の歌のうまさがよく分かるだろう。 全くヴォーカリストとしても完璧だな。 【生徒】 老師、盲信的ですね。 【老師】 ファンとは古今東西そういうものだ。 盲信的でないファンなんておかしいぞ。 【生徒】 そりゃあそうですけどね。 【老師】 最後のギター・ソロも泣かせるだろ。 ブライアンという奴も偏屈者でな、20年以上も前のハンド・メイド・ギターを未だに使っている。 フレディのヴォーカルをサポートするんじゃなく異種格闘技を繰り広げるのだ。 ブライアンのギターがあればこそ、フレディのヴォーカルも生きる。 【生徒】 こういう曲はライヴで盛り上がるでしょうね。 【老師】 ライヴか。 じゃあ、ライヴ盤からひとつ行ってみようか。 『ドント・ストップ・ミー・ナウ』1979 【生徒】 摩訶不思議な曲ですね。 【老師】 だろう。 こういう曲は努力して書けるというもんじゃないんだ。 インスピレーションというか、天賦の才能のなせる技だろうな。 【生徒】 老師、そう言ってしまえば音楽評論の意味がなくなるじゃありませんか。 【老師】 だけど、渋谷陽一も言ってるぞ。 ビートルズの『アビイ・ロード』を聞くたびに、評論するということが馬鹿馬鹿しくなるって。 【生徒】 評論家がそんなこと言ったら、自分の首を絞めるようなものじゃないですか。 【老師】 それはそうなんだけど、世の中にはそれほどとんでもない作品があるって事だよ。 【生徒】 それにしても、異常なテンションですね。 間奏のヴォーカル、ギター、ドラムスの絡み合いなんか筆舌に尽くし難いものがあるのを感じました。 【老師】 うまいこと言うな。 そろそろ、フレディ・マーキュリーなる人物がただ者ではないことが分かってきただろう。 んじゃ、次これ。 『アンダー・プレッシャー』1981 【老師】 これはフレディとデヴィッド・ボウイの共作だ。 これほどスリリングな共演も他にあるまい。 【生徒】 背中がゾクゾクしますね。 真ん中のボウイが「love,love... 」って歌い出すとこなんか。 【老師】 82年に俺は西宮球場でクイーンのコンサートを見たんだ。 その時の生『アンダー・プレッシャー』の感動と言ったら、もう思わず体中に寒気が走ったのを覚えているよ。 静と動がすりかわる瞬間の刹那的高揚だ。 ああ、うまく言えない。 【生徒】 いやほど言ってますよ。 全く、すぐ興奮する人だな。 【老師】 では落ち着くために、悲しいこれを聞いてみよう。 『ライフ・イズ・リアル』1982 【老師】 80年12月8日にジョン・レノンが射殺されたのは知ってるだろ? これはレノンに捧げた曲だ。 この歌詞を見るとフレディの人生観が生々しく分かる。 【生徒】 「人生は売女」なんて凄い表現ですね。 もう音楽しか信頼できなかったのかな。 【老師】 彼は生涯独身だった。 ロンドンの大邸宅にはメイドと運転手の他には、10匹以上の猫がいて、彼は表面上きらびやかなライフ・スタイルを描きながら、その実、リアルな現実から逃避していたんだ。 【生徒】 『伝説のチャンピオン』現象ですね。 【老師】 そう、この曲はレノンに捧げるというよりも、フレディの人生に対する叫びなんだ。 レノンの死はその触媒に過ぎなかった。 【生徒】 何という多重人格。 行くとこまで行ってますね。 【老師】 ああ、コインのどちら側を向くにしてもとことんまでだ。 フレディの辞書には断じて中庸という言葉はない。 【生徒】 ………… 【老師】 どうした? 【生徒】 少し怖くなってきて…… 【老師】 ハハ、フレディは怖い奴さ。 そして優しくて、寂しい奴さ。 もう充分分かってるじゃないか。 【生徒】 そうですか? 【老師】 じゃあ、最終段階へ行こうか。 『狂気への序曲』1991 【生徒】 気色悪い曲ですね。 【老師】 どうやら、89年に彼はエイズの宣告を受けたらしい。 迫り来る死への恐怖のフレディ流の表現だ。 まあ、今となって言えることだがね。 発表当時は何のことかよく分からなかったというのが真相だ。 【生徒】 不治の病を患った気持ちってどんなんだったんでしょうね。 テレビ・ドラマではよくあるけど。 【老師】 その前に何か気付かないか? 選曲の間隔がやたら空いているだろ? 【生徒】 それは、その間に単に老師の好みの曲がないだけの話でしょ? 【老師】 まあ、そうとも言えるんだけど、つまりは作品のレベルが低いって事だ。 この時期のクイーンは完全にバラバラだった。 既に全世界を制覇し、チャレンジャー精神を失った彼らは、惰性で程々の作品を生み出すだけの存在になってしまった。 もっともライヴでは相変わらず超絶的なパワーを誇っていたけれども、新しい何かを生み出すパワーは消え失せていた。 過去形のバンドになりつつあったのだ。 【生徒】 それでよく持ちましたね。 【老師】 89年に発表された『ザ・ミラクル』を聞いた時、クイーンはまたやってくれたと思ったよ。 復活したんだ。 とにかくメロディがどうの、演奏がどうのと言う前に勢いが感じられた。 一体感が戻った。 それでこれも今だから分かるんだが、フレディのエイズ宣告がバンドに危機感をもたらし、皮肉にもバンド復活の引き金となったのだ。 【生徒】 そして、この曲に続く訳ですか。 【老師】 そうだ。 ラスト・アルバム『イニュエンドウ』は、太陽が沈む前の最後の輝きだ。 【生徒】 何か悲しくなってきました。 【老師】 俺の方が泣きたいよ。 それじゃあ、もうひとつ『イニュエンドウ』から『輝ける日々』を聞こう。 『輝ける日々』1991 【生徒】 「アイ・スティル・ラブ・ユー」というのは『ラブ・オブ・マイ・ライフ』と同じですね。 フレディの得意フレーズなんですか? 【老師】 この曲はロジャーが中心になって書いたらしいが、最後のフレーズだけはフレディの俺たちへのメッセージに思えて仕方ないんだ。 【生徒】 ちょっと冷静には聞けませんね。 いろんなことを考えてしまって。 【老師】 今となってしまえば、どうにでも解釈できるからな。 こっちが思い込み過ぎてる場合もあるかもしれん。 ファンなんて勝手なもんだ。 アーティストと本当に通じ合うことなんて出来やしない。 だからこそ、フレディは何度も「アイ・スティル・ラブ・ユー」と歌ったんだ。 通じ合えないと分かっているからこそ、より理解しあいたいものなんだ。 【生徒】 最後まで真摯だったのかな? 【老師】 真摯というよりも、限りなくオプティミスティックなペシミストだったということだろうな。 その答えがこの曲だ。 『ショウ・マスト・ゴー・オン』1991 【老師】 これがラスト・アルバムの最終曲だ。 【生徒】 ショウとはどういう意味なんでしょうか? 【老師】 まあ、どうにでも訳せるけどな。 自由に解釈してくれよ。 【生徒】 「人生は続いて行く」ですか。 【老師】 フレディが死んでから、あちこちの宣伝文句にやたらこの言葉が使われている。 それだけ分かりやすいメッセージということだな。 でも俺は「僕は空を飛べるんだ………友よ」のところがフレディのラスト・メッセージだと思うけどな。 ほんとに飛んで行っちゃったんだ。 【老師】 これでとりあえず終わりだ。 最後はどうも暗くなってしまったな。 【生徒】 仕方ないでしょう。 なにぶんナニがアレですから。 【老師】 そうだな。 【生徒】 ところで最初に言った「ママミヤレッミーゴー」っていう曲が出てきてないんですけど。 ? 【老師】 それは『ボヘミアン・ラプソディ』だ。 最後にとっておいたんだよ。 【生徒】 早くかけてくださいよ。 【老師】 待て、俺はこの曲を聴いた後10分間は誰とも話したくなくなるんだ。 だから、最初に説明しておこう。 【生徒】 随分、大層なんですね。 【老師】 それだけの意味のある曲なんだ。 フレディはこの曲を書くために生まれてきたと言っても過言ではない。 【生徒】 そういう時は、大概、過言なんですけどね。 【老師】 黙らっしゃい! 超緻密な構成、魂の乗り移ったオペラティック・ハーモニー、ブライアン一世一代のギター・ソロ、そして何よりも重要なのはフレディの歌う「Mama〜」の余韻だ。 この余韻こそ、フレディ自身なのだ。 【生徒】 分かりました、分かりました。 【老師】 分かってない! 「いっそのこと 生まれてこなければよかったと」と歌うフレディの気持ちが貴様ごときに分かってたまるか! 【生徒】 老師、単なる危ないおたくになってますよ。 【老師】 ………… 【生徒】 それでは『ボヘミアン・ラプソディ』行ってみよう。 【老師】 ………… 『ボヘミアン・ラプソディ』1975 【老師】 ………… 【生徒】 ………….

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